心臓
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第24回 臨床不整脈研究会
器質的心疾患を認めない心室頻拍に対して心外膜側アプローチによるカテーテルアブレーション治療が奏功した2症例
中村 啓二郎内藤 滋人林 達哉佐々木 健人塚田 直史早野 護西内 英福家 悦子三樹 祐子坂本 有中村 紘規絈野 健一熊谷 浩司大島 茂
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2012 年 44 巻 SUPPL.3 号 p. S3_163-S3_172

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抄録

器質的心疾患を認めない持続性心室頻拍(SVT)に対して心外膜アプローチによる高周波カテーテルアブレーション(RF)が奏功した2例を経験した.
症例1は21歳,男性,心室頻拍(VT)に対して心内膜側より初回のRFを施行した.中心臓静脈(MCV)に留置した電極カテーテルの遠位側がVTの最早期興奮部位であり,その対側の内膜側より明らかに先行していた.心内膜からの焼灼が無効であるため,心外膜側アプローチによるRF(2nd session)を行った.CARTOでの左室心外膜側のvoltage mapでは左室後下壁において地図状に広がるlow voltage area(LVA)を認め,その辺縁および内部に遅延電位(DP)が記録された.DPが記録された部位でVT中に拡張期電位(MDP)を認め,同部位でconcealed entrainmentが得られ,post pacing intervalが頻拍周期に一致,s-QRS間隔とMDP-QRS間隔が一致していた.critical isthmusを横断するように焼灼を行い,VTは誘発不能となった.
症例2は40歳,男性,前医にてVTに対して初回のRFを施行した.Ensite(Navx)で心内膜側にLVAを認めず,VTは左室側壁を最早期とするcentrifugal patternであった.心内膜側からのRFが無効であり当院紹介となった.心外膜側アプローチにてRFを施行,CARTOでの左室心外膜側のvoltage mapで左室後側壁にLVAを認め,側壁側辺縁にDPが記録された.同部位でpacemapはVT波形と一致しており,s-QRS間隔が延長していた.VT中の血行動態が不安定であったため,pacemapによりVTの回路を推察した.Pacemapが一致した部位とDPを認めた部位を指標に線状に焼灼を行い,VTは誘発不能となった.
2症例とも器質的心疾患を疑う所見は認めなかったが,心外膜側のみに不整脈基質が存在していた.器質的心疾患を認めないVTに対して心外膜アプローチによるRF治療が奏功した2例を経験したので報告した.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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