抄録
Andersen-Tawil症候群(ATS)は不整脈・周期性四肢麻痺・形態異常を特徴とする稀な遺伝性疾患である.今回,ATSに合併した心室性不整脈に対して各種薬物効果を確認したので報告する.症例は47歳の女性.幼少時より多源性・多発性の心室期外収縮による頻脈・失神歴があり,最近はピルジカイニド100mg/日を内服されていた.2011年動悸が悪化し他院へ入院.その際の遺伝子検査にてKCNJ2遺伝子に既報のミスセンス変異を認め,ATSと診断され,精査加療のため当院へ入院となった.フレカイニド,ピルジカイニド,フェントラミン,ベラパミル静脈投与で著明な心室期外収縮抑制効果を認めたが,β遮断薬は無効であった.心臓電気生理学的検査では持続性心室頻拍や心室細動は誘発されなかった.自然発生の心室期外収縮に対して良好なペースマップが得られた部位で通電したが,すぐに再発し,アブレーションの効果は乏しいと判断した.その後,スピロノラクトン,イコサペント酸,フレカイニド200mgの内服で著明に心室期外収縮数が減少し,症状の劇的な改善を認めた.