抄録
症例は54歳,女性.2011年3月,東日本大震災後より動悸を自覚し前医受診.心拍数180台の上室性頻脈,うっ血性心不全の状態を認めた.心拍数コントロール施行も奏功せず,electrical cardioversionを施行され当科転院となった.転院後頻脈の再発はなく,β遮断薬などの内服加療により心不全は改善,左室駆出率40%であった心収縮能も正常化し明らかな心基礎疾患は同定されなかった.退院後,頻脈の再発を認めカテーテルアブレーションを施行した.右房内に広範囲な低電位領域が存在,頻脈は右房分界稜を旋回する非通常型心房粗動であり,分界稜の下側壁側に認めたfragment電位への通電で治療に成功した.術後洞調律を維持したが,左脚前枝ブロックが残存した.また経過中クレアチンフォスフォキナーゼ(creatine phospho kinase;CPK)の持続高値を認め,骨格筋生検施行.肢体型筋ジストロフィと診断された.本症において上室性頻拍を初発症状とする報告は稀であるが,不整脈基質と関連した可能性が高く,心機能の推移を含め慎重なフォローが必要である.