抄録
症例:77歳,男性.1997年3月に急性心筋梗塞を発症し,左前下行枝#7にベアメタルステント(bare metal stent;BMS)を留置している.その後,内服薬を自己中断していた.2010年10月,冷汗を伴う胸痛を自覚し摂食不良となった.翌々日に喘鳴,呼吸苦が出現し当院に救急入院,来院時の収縮期血圧が70 mmHgと心原性ショック状態で,心電図でⅡ,Ⅲ,aVF,V2〜6にてST上昇がみられた.緊急冠動脈造影にて右冠動脈#3で完全閉塞,左前下行枝#7 ステント内で血栓性閉塞,#6で99 %の狭窄を認めた.責任病変を#7と診断し大動脈内バルーンパンピングを挿入し経皮的冠動脈インターベンション術に移行した.血栓溶解療法(tissue plasminogen activator;t-PA)を冠動脈内に投与し,血栓吸引後,#6〜#7に薬剤溶出ステント(drug eluting stent;DES)を挿入し血行再建を得られるも心室細動を繰り返した.電気的除細動を繰り返し,懸命に蘇生を図るも反応なく永眠した.BMS留置13年後においてもステント血栓症が生じることに留意する必要があると思われる.