2013 年 45 巻 SUPPL.2 号 p. S2_80-S2_85
背景と目的 : 心肺停止から蘇生された患者の神経学的予後は, 生存退院や社会復帰の有無でおおまかに評価されることが多い. しかし, 実際の患者は, 退院し, 自宅に戻り職場復帰できてもさまざまな問題に直面する. われわれは心肺停止後, 蘇生患者における高次脳機能障害を神経心理学的検査で評価した. 対象と方法 : 対象となったのは心室細動を生じ, 電気的除細動を含む心肺蘇生がなされ, 生存退院した 4名 (男 2名) , 年齢19~72歳, 蘇生後 1~6年で, 全例除細動までに10分以上要している. 言語聴覚士によるリバーミード行動記憶検査, WAIS-Ⅲ成人知能検査で, 記憶, 知能を中心に高次脳機能を評価した. 結果 : 障害の程度は症例ごとに異なり蘇生までの時間, 発症時の年齢などと単純に相関しなかった. 内容は記銘力など記憶を中心とする障害を示すもの, 記憶のみならず知能に障害が及ぶものにわかれた. 考察とまとめ : 症例ごとに高次脳機能およびその障害を評価することは, 患者の目標設定, 職種選択など社会復帰に有効な手段となる可能性がある. 心事故から蘇生された患者の障害パターンに特異的な所見が存在するか否かは, 今回の検討ではデータが少なく判断できない. しかし, データを蓄積していけば脳低体温療法やリハビリなどの治療効果判定や, 治療の進歩に役立つ可能性がある.