心臓
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[症例]
心内の腫瘤性病変が腫瘍性石灰沈着症と判明した1剖検例
大塚 信一郎稲葉 美紀井上 友樹新藤 英樹田村 英俊渡辺 浩二大石 学鈴木 創形山 憲誠小泉 博史布村 眞季並木 眞生
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2014 年 46 巻 4 号 p. 489-495

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抄録
 症例は66歳女性. 49歳時に慢性腎炎による腎不全のため血液透析が導入された. 統合失調症にも罹患しており, 透析コントロール不良で, 体重増による入退院を繰り返していた. またつねに高リン血症があり, 薬物治療のほか, 二次性副甲状腺機能亢進症に対しての経皮的エタノール注入療法を繰り返されていた. 心臓超音波検査にて徐々に増大する僧帽弁輪後尖部に石灰化を伴う腫瘤性病変を指摘されたが, 精査は拒否され経過観察がなされていた. 体重管理不良に加え, 常時低血圧となり透析困難状態が続き, 最終的に小腸壊死により死亡. 死後の剖検にて心内の腫瘤性病変は腫瘍性石灰沈着症と判明した. 慢性透析症例において, 心臓超音波検査で心内の異所性石灰化はしばしば認められるが, 腫瘤状に増大し腫瘍性石灰沈着症にいたる例は稀である. 本例で腫瘍性石灰沈着症にいたった要因としては, 高リン血症のコントロールが不良であったことが考えられた. また腫瘍性石灰沈着症は塞栓症や弁狭窄を呈することがあるため, 慢性透析例で石灰化を伴う心内腫瘤を認めた場合は腫瘍性石灰沈着症を念頭に置きフォローアップする必要があると考えた.
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© 2014 公益財団法人 日本心臓財団
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