抄録
症例は67歳の男性. 自宅で心肺停止状態となり, 家族によるbystander CPRと救急隊によるAED作動で心拍再開し当院へ搬送となった. 心エコー図で器質的心疾患は検出されなかったが, 心電図の下壁誘導でJ波が認められ, アセチルコリン負荷冠動脈造影で左冠動脈の攣縮が誘発された. カルシウム拮抗薬を投与し, 加えて植込み型除細動器 (ICD) の適応とした. 退院後にVFによるICD正常作動が月2回の頻度で認められた. 発作は深夜1時~6時にかけて生じており, VF発現直前は心室期外収縮による2段脈を認めた. 発作時には胸痛などの冠攣縮に関連した症状はなく, 頻回にホルター心電図を施行したが, 夜間に有意なST変化は一度も検出されなかった. 発作がいつも深夜帯であったことから, ムスカリン受容体遮断作用のあるジソピラミド徐放剤150mg/日 (就寝前) を開始した. その結果, 2年以上経過しているが一度もICD作動なく良好に経過している.