心臓
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46 巻, SUPPL.3 号
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第26回 臨床不整脈研究会
特別講演
  • 西﨑 光弘
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_5-S3_13
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     冠攣縮性狭心症患者においては, 院外心肺停止や突然死の主たる原因が心筋虚血発作時に出現する致死的心室性不整脈であることが示されている. 致死的心室性不整脈の予知やリスク評価には冠攣縮発作時と無症候状態における不整脈の発生基質を明らかにすることが重要であり, TWA, J波, QT dispersionによる非侵襲的検査および電気生理学的検査上のVT, VFの誘発性を検討することが有用である. 治療としては, 原則的にCa拮抗薬による内服治療であるが, 突然死の二次予防にICD治療が有効である報告も散見される. 冠攣縮発作に併発するVFが再発する薬物抵抗性の場合や冠攣縮発作に併発するVFを認め, 薬物投与が認容されない場合はICD治療も考慮されるべきである. 一方, VFの初発例の場合は, 発症時の薬物投与の有無や不整脈発生基質を十分に検討し, ICDの適応を慎重に決めていくことが必要である.
一般演題
  • 坂部 茂俊, 神山 崇, 石山 将希, 森 一樹, 森脇 啓至, 杉本 匡史, 掘口 昌秀, 高村 武志, 世古 哲哉, 笠井 篤信
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_14-S3_20
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     発作性上室頻拍 (PSVT) をもつ70歳代女性に対し高周波カテーテルアブレーションを行った. 心室早期刺激により, V-A-V sequenceでlongR-P' tachycardia (PSVT1) が誘発された. PSVT1の心房波は冠静脈洞入口部 (CSO) がヒス (His) 束より早かったが, 別のlongR-P' tachycardia (PSVT2) に移行し, PSVT2では心房波はHis束がCSOより早かった. 2つの頻拍は互いにswitchしmappingが困難であったため, まず稀有型房室結節リエントリー性頻拍と考えられるPSVT1を治療することにした. 洞調律下のslow pathway potentialを指標にCSO前方で通電したところ, PSVT2のみが誘発されるようになった. CARTO systemで作成したPSVT2のactivation mapでは, 心房波はHis束近傍が最早であった. アブレーションカテーテルを前中隔におき, 最大His束電位が得られる部位から後上方に約5mm移動し, His束電位を記録しないことを確認し通電したところ, 約2秒で頻拍は停止し, いずれの頻拍も誘発されなくなった. PSVT2はfast/slow型AVNRTとATP感受性心房頻拍との心房頻拍を鑑別が困難であった.
  • 杉浦 伸也, 松岡 宏治, 福岡 秀介, 幸治 隆文, 谷川 高士
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_21-S3_27
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     【症例1】82歳女性. 間欠性A型WPW症候群に対してカテーテルアブレーション (ABL) を施行した. アンギオ室入室時にはデルタ波は認めなかった. 電気生理学的検査では, コントロール下とβ遮断薬 (ランジオール) 投与下においては副伝導を介する順行性および逆行性伝導を認めなかったが, β刺激薬 (イソプロテレノール (ISP) を投与したところ同伝導路を介する両方向性の伝導を認めるようになった.  【症例2】73歳女性. 発作性上室性頻拍に対しABLを施行した. 左室側壁に副伝導路を介する逆行性伝導を認めたが, コントロール下においては110ppmまでしか1 : 1伝導を認めなかった. しかし, ISPを投与したところ200ppmまで1 : 1伝導するようになり, さらには順方向性の房室回帰性頻拍が誘発されるようになった. 一般的に副伝導路は固有心筋でありカテコラミンに非感受性であると考えられているが, 副伝導路の有効不応期が短縮し, 伝導が亢進した2例を経験したため報告する.
  • 松本 健佑, 武 寛, 大原 美奈子, 伴場 主一, 大江 透
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_28-S3_35
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は32歳, 男性. 既往歴に特記事項なく, 突然死の家族歴もなし. 25歳時の健診でWPW症候群を指摘されていた. 頻拍発作の既往はなかった. 運動習慣はなかったが, マラソン大会に出場し, 8km地点で心室細動となり自動体外式除細動器で電気的除細動された. 電気生理学的検査では副伝導路は左室側壁に認め, 心房期外刺激による副伝導路の順行性有効不応期は基本周期600msで250msであった. 副伝導路の逆伝導は認められず, 房室回帰性頻拍は誘発されなかった. イソプロテレノール投与下に心房期外刺激で頻拍周期157msの心房頻拍が誘発され, 副伝導路を2対1で伝導していた. 副伝導路を焼灼後, デルタ波は消失した. 右室心尖部及び流出路からプログラム刺激を行ったが心室細動は誘発されなかった.  本症例は副伝導路の有効不応期は短くなかったが, 上室性頻拍から心室細動へ移行したと推測された. 初発症状が心室細動であった顕性WPW症候群の1例を経験したため報告する.
  • 長谷部 雄飛, 福田 浩二, 中野 誠, 近藤 正輝, 佐竹 洋之, 平野 道基, 下川 宏明
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_36-S3_42
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例1は, 15歳女性. 小学生の時にWPW症候群を指摘. 運動中に出現した心拍数300/分台の偽性心室頻拍で当科紹介. C型顕性WPW症候群, デルタ波はⅡ誘導で陰性であり, 心外膜側Kent束と予測された. 順伝導ERPは220msec, 心室早期刺激にて容易に房室回帰性頻拍が誘発された. 冠状静脈洞 (CS) 内の順伝導最早期部位における心室側への通電で離断に成功した.  症例2は, 22歳男性. 小学生の時にWPW症候群を指摘. 強い精神的ストレス下で, 心拍数280/分台の偽性心室頻拍を発症. ピルジカイニド内服後もデルタ波残存し, Ⅰ, Ⅱで陽性, V1, aVFで (±) であり, 後中隔Kent束と予測された. Kent束の順伝導ERPは240msec未満. CS入口部前面に順伝導最早期を認め, 入口部から内部に入った逆伝導最早期部位への通電と, さらに奥での追加通電にて離断に成功した. CS内通電を要した後中隔Kent束で, 心房細動合併時に速い心室応答を示したハイリスク偽性心室頻拍の若年2症例経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 田村 未央, 金古 善明, 中島 忠, 入江 忠信, 太田 昌樹, 飯島 貴史, 飯塚 貴史, 田村 峻太郎, 小林 紘生, 齊藤 章宏, ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_43-S3_47
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     27歳, 男性. 高校生頃より動悸発作を自覚していた. 心電図は, A型WPW症候群で下壁誘導のデルタ波の極性は平坦であった. 頻拍は, 左側副伝導路を介する房室回帰性頻拍であった. 冠静脈洞 (CS) マッピングにおいて, 洞調律時の最早心室興奮は左室後壁であったが, 逆伝導時の冠静脈洞筋叢 (CSM) 電位の最早は約3cm離れた左室側壁であり, 副伝導路の斜走が疑われた. しかし, 左房 (LA) 内マッピングにおいて, 1) 副伝導路逆伝導時に最早LA電位は後壁であり, 2) 洞調律時の同部位の電位は単極誘導記録でPQSパターンを呈し心室波がデルタ波に先行しており, 3) さらに同部位での通電にて約2秒にてAPの離断に成功したことから, 後壁に心房・心室端を有する房室APと考えられた. 本例は, 電位CSMと左房との接合が側壁以外では粗である稀な例であるため, 後壁AP逆伝導時の最早CSM記録部位が側壁となったと考えられた.
  • 田中 耕史, 井上 耕一, 豊島 優子, 岡 崇史, 田中 宣暁, 外海 洋平, 野里 陽一, 岩倉 克臣, 藤井 謙司
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_48-S3_53
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は51歳男性. 頻拍の加療のため近医より紹介となった. 洞調律時, V1誘導はrsR’ パターンで+/-のデルタ波を伴っていた. 発作時心電図は230bpmのregular wide QRS tachycardiaであった.  心臓電気生理学的検査では頻拍中の心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部近傍であり, His不応期での心室期外刺激で頻拍はリセットされた. 房室結節を順行性に, 後中隔副伝導路を逆行性に伝導する正方向性房室回帰性頻拍と診断した.  冠静脈入口部近傍で頻拍中に高周波通電を行ったところ頻拍は速やかに停止した. その後, 逆伝導は房室結節を介するもののみとなり, デルタ波も消失した. 一方, 右脚ブロックが顕在化し, QRS幅は術前140msから術後160msに拡大した. 術前は, 右側後中隔副伝導路を介して右室が早期に興奮していたため元来の右脚ブロックがマスクされ, QRS幅も相対的に狭くなっていたと考えられた.
  • 長内 宏之, 鈴木 文男, 中川 貴史, 中村 健太郎, 瀬崎 和典, 中島 義仁, 浅野 博, 味岡 正純, 酒井 和好
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_54-S3_60
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
    はじめに : 電気生理検査 (EPS) にて高度心房内ブロック (Ⅱ度~Ⅲ度ブロック) の出現を認めることは極めて稀である. 今回われわれは心房粗動 (AFL) 時に高度心房内ブロックの出現を認め, さらにブロックの出現に伴う心房波間隔の延長時に心房波高が著明に増大するという稀な所見を呈した症例を経験した. 症例 : 通常型AFL症例 (83歳男性) の電気生理検査時, 冠静脈洞 (CS) 入口部領域に3峰性電位 (a+b+c電位) の形成を認めた. AFL (周期220~230ms) に対し周期170~200msにてCS pacing (S1~S20刺激) を施行し, 3峰性電位の反応を検討した. 周期180msのentrainment刺激の際, 第Ⅱ度心房内ブロック (Wenckebach型及び2 : 1ブロック) が出現しS4・S6刺激にてc電位の脱落を見た (この所見よりc電位はAFL回路には含まれない “袋小路電位” と診断された). c波高は, c電位脱落に伴うc-c間隔の延長度合いに比例して増大し, 先行c-c間隔が最長となった際のS7刺激由来のc波が最大波高を示した. 考察 : 本症例においてCS入口部領域で観察されたc電位はAFL回路に接続するdead-end pathwayにて記録された “袋小路電位” である可能性が強く示唆された. c波高は “先行c-c間隔” の延長 (=徐拍化) に比例して増大したが, ①徐拍化に伴う同期的興奮の可能な心房筋容量の増加, ②異方向性伝導の関与, などの機序が推察された.
  • 高木 高人, 榎本 善成, 佐原 尚彦, 楢林 ゆり子, 橋本 晃, 伊藤 尚志, 久次米 真吾, 熊谷 賢太, 酒井 毅, 坂田 隆夫, ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_61-S3_66
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は49歳男性, 薬剤抵抗性の発作性心房細動に対するカテーテルアブレーション目的で当院紹介受診となった. 推定心房細動罹病期間は約18年であり, 左房径は42mmでベプリジル200mg/日でリズムコントロールが行われていた. 入室時, 心房細動 (atrial fibrillation : AF) と洞調律を繰り返していた. まず左肺静脈を後壁側から解剖学的に拡大隔離し電気的にも左上下肺静脈が隔離されていることを確認した. その後右肺静脈も同様に解剖学的に隔離し右上下肺静脈の電気的隔離が確認できたが, 右下肺静脈付近からのfiringで心房細動が持続する状況を繰り返した. 右心系をマッピングしたところ下大静脈起源の上室性期外収縮 (PAC) が原因であると判明したため, 同PACをターゲットにアブレーション施行したところAFは停止し以降誘発不能となった. 非肺静脈起源の心房細動において, 下大静脈からの上室性期外収縮が心房細動発生に寄与している症例の報告は稀でありいくつかの文献的考察を含めて報告する.
  • 山下 周, 山内 康照, 柳下 敦彦, 佐藤 弘典, 平尾 龍彦, 尾林 徹, 宮本 貴庸, 梅本 朋幸, 原 信博, 山口 徹雄, 宮崎 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_67-S3_72
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は70歳女性. 徐脈頻脈症候群伴う発作性心房細動 (PAF) に対し, 平成23年1月に拡大肺静脈隔離術 (PVI) と上大静脈隔離術 (SVCI) を施行した. この時, 左上肺静脈 (LSPV) のトリガーを認めていた. PVI後, PAFは生じなくなり退院したが, 術後1カ月でPAFと10秒の洞停止が再発したため2nd sessionを施行した. 洞調律時LSPVの再伝導を認め, このLSPVからはexit block伴う異常興奮が頻回に出現し, LSPVの再伝導がPAF再発の原因と考えられた. CSペーシングでは220msの連続刺激でも左房 (LA) -LSPV伝導は1対1伝導を呈するものの, LSPV内より600msでペーシングしても心房はまったく捕捉されず, LSPV内より110msでペーシング行ったところLSPV頻拍が生じたが, この時も心電図は洞調律を維持しており, LSPV-LA間には一方向性伝導ブロックが考えられた. ATP 20mgを静注したところ房室ブロック出現後, LSPV頻拍が誘発されたが, この時も心内は洞調律でありLSPV-LA方向のdormant conductionも認めなかった. 以上の所見から再発したPAFはLSPVの再伝導が原因ではなく, non PV, non SVC起源トリガーの存在が示唆された. その後, ISP負荷にて複数のnon PV起源PAFが生じたためトリガーアブレーションを施行した. ペースメーカ植え込みを行いホームモニタリングしているが心房細動の再発なく経過している. 慢性期にLSPV-LA間の一方向性伝導ブロックを呈した稀な症例を経験し, その評価がnon PV起源の予測に有益であったため報告する.
  • 山嵜 継敬, 竹中 創, 村瀬 達彦, 上野 明彦, 佐々木 法常, 高橋 英雄, 津田 泰任, 伊藤 賀敏, 福永 博, 村井 治
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_73-S3_78
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は57歳, 男性. 薬剤抵抗性の発作性心房細動に対して2012年7月カテーテルアブレーション治療を施行. この際肺静脈隔離術および下大静脈三尖弁輪間峡部線状焼灼を施行した. 心房細動の再発に対して2013年3月2回目のカテーテルアブレーション治療を施行. 右下肺静脈-左房間の再伝導部位へのアブレーション後, ATP投与を行ったところ心房細動が出現. 除細動後再びATPを投与すると再現性をもって心房細動が誘発された. 先行する上室性期外収縮は右房起源と判断し, カテーテルでマッピングし右房外側に通電を行うも期外収縮の減少および心房細動誘発抑制の効果が得られなかったため, 右房にEnsite Arrayを留置. Non-contact mappingで解析したところ, 右房側壁にearly activation siteを認め, preferential conductionを介して右心耳近傍にbreak out siteが記録された. Break out siteへの通電後にはATPを投与するも心房細動は誘発されなくなった. 退院後も心房細動の再発は認めていない.  非肺静脈起源の心房細動再発に対してEnsite Arrayが有効であった1例であり報告する.
  • —糖尿病非合併例との比較—
    小澤 真人, 小松 隆, 佐藤 嘉洋, 椚田 房紀, 芳沢 礼佑, 森野 禎浩, 中村 元行
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_79-S3_85
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     目的 : 糖尿病を合併した発作性心房細動 (AF) 例における抗不整脈薬療法の予防効果ならびに心血管予後について, 非合併例と比較する.  方法 : 対象はリズムコントロール療法を行った発作性AF505例 (男性341例, 女性164例, 平均年齢66±12歳) であり, 糖尿病合併群 (Ⅰ群, N=66) ならびに糖尿病非合併群 (Ⅱ群, N=439例) の2群に振り分け, 各群における抗不整脈薬による長期予防効果, 心血管予後を比較した (平均観察期間51±34カ月).  結果 : (1) 観察期間1カ月, 3カ月, 6カ月ならびに12カ月目のAF非再発率は, Ⅰ群85%, 74%, 56%, 44%, Ⅱ群88%, 77%, 69%, 58%であり, Ⅱ群に比しⅠ群が有意に低率であった (P=0.034). (2) 観察期間12カ月, 36カ月, 60カ月ならびに120カ月目の慢性化阻止率は, Ⅰ群94%, 83%, 77%, 71%, Ⅱ群96%, 92%, 89%, 85%であり, Ⅱ群に比しⅠ群が有意に低率であった (P=0.013). (3) 多変量解析では, 糖尿病合併例におけるAF慢性化の独立した予測因子は, 無症候性 (オッズ比=9.55, 95%信頼区間1.11-20.27, P=0.009), 病歴期間 (OR=1.01, 95%CI 1.00-1.02, P=0.040) であった.  結語 : 糖尿病合併の発作性AFは抗不整脈薬治療抵抗性の経過をたどる.
  • 鈴木 健太郎, 山下 晋, 宮廻 英司, 眞木 高之, 越田 俊也
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_86-S3_89
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は75歳男性. 肥大型心筋症, 高血圧症で近医通院中であった. 2013年2月に両下腿浮腫を自覚, これを契機に心房細動およびうっ血性心不全の診断に至った. 抗凝固療法は, 推算CCr 73mL/minであったが70歳以上のためタビガトラン220mg/日とされた. 心房細動は持続し, 4月に除細動目的で当院紹介となった. 経食道心エコーで左心耳に径14×19mmの浮動性腫瘤を認めた. 血栓を疑い, タビガトランを休止し, ヘパリンとワルファリンを投薬した. 本症の血栓はサイズ・可動性の点からも塞栓症のリスクが高く, 早期の外科的介入が必要と考えた. 心臓血管外科のもと左心耳内腫瘤摘出術, Maze Ⅳ術他を施行された. 腫瘤は一部器質化を伴う血栓であった. 除細動前の経食道心エコーで初めて血栓が明らかになった. 左心耳内血栓の発症率および予測, 左心耳内血栓への新規経口抗凝固薬NOACによる治療報告について文献的考察を踏まえて報告する.
  • 八木 直治, 大塚 崇之, 有田 卓人, 妹尾 恵太郎, 鈴木 信也, 相良 耕一, 山下 武志
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_90-S3_94
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例 : 46歳男性.  主訴 : 突然の左前腕のしびれおよび冷感.  現病歴 : 発作性心房細動を指摘されているが, CHA2DS2-VAScスコアは0点であったため, 抗凝固療法は行われておらず, β遮断薬の投与のみで経過観察中であった. 2013年2月, 仕事中に突然, 左前腕のしびれと冷感を自覚し, 当院を受診. 血管エコーで, 左上腕動脈の遠位部で血栓閉塞していると考えられた. 来院時の心電図は洞調律であり, Dダイマーは陰性であった. 経食道エコーでは, 左心耳・左房内に血栓を認めず, モヤモヤエコーも認めなかった. 大動脈のプラークも指摘できなかった. 橈骨動脈は軽度だが触知可能であり, 抗凝固療法で経過をみた. 上腕動脈の血栓は, 入院翌日には尺骨動脈へ移動し, 尺骨動脈の遠位は橈骨動脈から逆行性に血流を認めたため, 抗凝固療法を継続し, 軽快した. 低リスク群であっても, 左心耳の形態によっては, 脳梗塞のリスクが増加することが報告されており, 本症例は「Cauliflower型」といわれる塞栓症をきたしやすい形態であった. 心房細動患者の抗凝固療法については, CHADS2などのスコアに加えて, 左心耳形態も考慮に入れる必要があると考えられる.
  • 吉澤 智治, 庭野 慎一, 庭野 裕恵, 深谷 英平, 藤石 珠美, 五十嵐 建, 石末 成哉, 及川 淳, 佐藤 陽, 岸原 淳, 村上 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_95-S3_102
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     背景 : 発作性心房細動症例では, 非心房細動症例と比較して洞調律P波の幅やそのばらつき (dispersion) が拡大していることが報告されている. これは心房細動発症に至る過程の心房拡大や伝導遅延を反映していると推定され, この解析を利用すれば心房細動新規発症を予測できる可能性がある. 今回われわれは, 心房細動新規発症症例において発症に先立つ洞調律P波の経時的変化を検討した.  方法 : 2008年~2012年に当院で心電図上心房細動が記録された2,213例から726例の心房細動新規発症例を抽出し, 先行する3年間に年1回以上12誘導心電図が記録されている28例 (71±11歳, 男性18例) を対象とした. 年齢, 性別をマッチさせた非心房細動28例と共に臨床背景, 内服薬, 血液検査所見, 生理検査所見, 特に, P波の経時的変化を検討した. P波は12誘導各々のP波幅 (duration) とそのdispersion, P波の振幅 (amplitude) を解析した.  結果 : 新規発症心房細動群ではV1誘導の振幅 (0.111±0.039mV vs. 0.139±0.055mV, p<0.036), 最大P波幅 (89.8±9.8ms vs. 103.2±18.2ms, p=0.011) とdispersion (35.2±12.0ms vs. 57.4±17.2ms, p<0.001) が経時的に漸増していたが, 非心房細動群では継時的な変化は認めなかった. また, 新規発症心房細動群は非心房細動群と比較しAF発症3年前のdispersionが既に増大していた (33.0±9.5ms vs. 40.2±12.9ms, p=0.022).  結語 : 新規発症心房細動群では心房細動発症に先行してV1誘導の振幅, 最大P波幅とdispersionの漸増が認められた. 本指標によって心房細動の新規発症が予測できる可能性が示唆された.
  • 李 基鎬, 山分 規義, 羽田 泰晃, 中野 国晃, 島田 博史, 高宮 智正, 稲村 幸洋, 中村 知史, 清水 雅人, 藤井 洋之, 西 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_103-S3_109
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は56歳男性. 2013年2月, 20時頃に電車内で10分程度の立位後に気分不快を自覚し, その後意識消失を認め頭部外傷を伴った. 同年4月にも同時間帯に同様の状況で前失神症状を2回認めたため, 当科受診. 神経調節性失神が疑われ, チルト試験を施行した. 立位80度負荷で25分後に気分不快を認め, 急激な心拍数の低下から32秒の心停止に至った. そのため胸骨圧迫を施行し, その最中に補充調律から正常洞調律へ復帰した. ホルター心電図のHRV解析ではLF/HF値が上昇傾向から下降に転じたのちにHF成分の急速な上昇を示し, 副交感神経活動の亢進が認められた. 長時間の心停止に至る悪性心抑制型神経調節性失神と考えられた. 後日, 電気生理学的検査を施行し洞機能は正常であった. 著明な心停止を呈した再発性失神であることより, 恒久性ペースメーカー植え込み術 (DDD) を施行した. その後Rate drop response (RDR) 機能を用いて再度チルト試験を行い, 失神を回避することができた. 今回, 長時間の心停止を伴う神経調節性失神に対してRDR機能が奏功した貴重な症例を経験したので報告をする.
  • 佐藤 高栄, 大西 哲, 三浦 瑞樹, 松原 巧, 中嶋 俊, 岸 幹夫, 松下 匡史郎, 山﨑 正雄
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_110-S3_116
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     54歳の男性. Mobitz型Ⅱ度房室ブロックに恒久的ペースメーカーが植え込まれている. 左脚ブロック, 上方軸波形を示す持続性心室頻拍 (VT) のため入院した. 洞調律は完全右脚ブロックで前胸部誘導に著明なイプシロン波を認めた. EPSでは洞調律中の心内電位で右室流出路 (RVOT) にのみ遅延電位を認め, 心室プログラム刺激によりVTは容易に誘発された. 右室心尖部 (RVA) からのペーシング波形はVT波形に類似し, VT中のNavX isochronal mapもRVAが最早期興奮部位で, 同部位が心内膜側の出口だと考えられた. RVOTにおいてVT中にpresystolic potentialを認め, 同部位からのペーシングでconcealed entrainmentを確認し, 同部位の通電でVTは停止した. 通電部位は緩徐伝導路の入口と考えられた. 考察を加えて報告する.
  • 藤野 紀之, 秋津 克哉, 小池 秀樹, 木下 利雄, 湯澤 ひとみ, 鈴木 健也, 阿部 敦子, 佐藤 秀之, 福永 俊二, 小林 建三郎 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_117-S3_124
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性. 自宅で心肺停止状態となり, 家族によるbystander CPRと救急隊によるAED作動で心拍再開し当院へ搬送となった. 心エコー図で器質的心疾患は検出されなかったが, 心電図の下壁誘導でJ波が認められ, アセチルコリン負荷冠動脈造影で左冠動脈の攣縮が誘発された. カルシウム拮抗薬を投与し, 加えて植込み型除細動器 (ICD) の適応とした. 退院後にVFによるICD正常作動が月2回の頻度で認められた. 発作は深夜1時~6時にかけて生じており, VF発現直前は心室期外収縮による2段脈を認めた. 発作時には胸痛などの冠攣縮に関連した症状はなく, 頻回にホルター心電図を施行したが, 夜間に有意なST変化は一度も検出されなかった. 発作がいつも深夜帯であったことから, ムスカリン受容体遮断作用のあるジソピラミド徐放剤150mg/日 (就寝前) を開始した. その結果, 2年以上経過しているが一度もICD作動なく良好に経過している.
  • 伊藤 章吾, 稲毛 智仁, 大江 征嗣, 熊埜御堂 淳, 原口 剛, 瀧井 英一, 権藤 健樹, 相澤 義房, 福本 義弘
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_125-S3_130
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は45歳, 男性. 家族歴として父が42歳時に睡眠中に突然死している. 巣状分節性糸球体硬化症の診断で当院腎臓内科に入院中, 心室細動 (VF) による心肺停止状態となった. 電気的除細動で一度は洞調律へ復したがVF stormとなった. 再発予防目的でリドカイン, アミオダロン, ニフェカラント, プロプラノロールを投与し計12度の電気的除細動を施行. 最終的に血行動態を維持するためPCPS (percutaneous cardiopulmonary support), IABP (intra-aortic balloon pumping) による補助循環を行った. この際の心電図ではJ波の著明な上昇を認めた. 補助循環で血行動態を維持し, その後電気的除細動を繰り返すも, 無効であった. その後アミオダロン持続投与後, 発症24時間後に電気的除細動を行い, 洞調律を維持できた. その後順調にPCPSから離脱し, 46病日に植込み型除細動器 (ICD) 植込み術を行い, 66病日に自宅退院し, 以後は後遺症なく社会復帰している. VFの再発予防に対しては初回入院時からジソピラミド150mg/日を導入し, 以後約4年間VFの再発はなく, また心電図でもJ波の消失が得られている. 補助循環を要した早期再分極症候群のVF storm症例にジソピラミドが長期的な再発予防に有効であった症例を経験したため報告する.
  • 福岡 裕人, 深水 誠二, 河村 岩成, 森山 優一, 中田 晃裕, 荒井 研, 名内 雅宏, 西村 卓郎, 渡邉 智彦, 北村 健, 北條 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_131-S3_138
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は56歳男性. 心室性期外収縮 (VPC) のため, 紹介入院となった. 心電図はVPC (右脚ブロック+上方軸) の三段脈であった. 運動負荷検査でVPCと同一波形の単形性心室頻拍 (VT) が誘発された. ATPに対する感受性があり, ベラパミルでの停止も確認した. 心臓電気生理検査ではイソプロテレノール投与下での右室心尖部 (RVA) からの期外刺激法で再現性をもってVTの誘発が可能であった. 期外刺激の連結期とVT開始までの間隔は逆相関を認めた. RVAからのover drive pacingにてfusion波形は得られなかった. VTはATP 10mgで再現性をもって停止した. VT中にactivation mapを作成したところ左室中中隔にfocalな最早期興奮部位を認めVT中に55ms先行するprepotentialを認めた. 同部位にアブレーションを行ったところ, VTは停止し頻拍の誘発は不可能となった. Entrainmentの証明は困難であったが, プログラム刺激での誘発が可能であり, 逆相関がみられ, リエントリー性頻拍が考えられた. ベラパミル感受性VTでATPにも感受性のある稀な症例を経験したので報告する.
  • 宮永 哲, 宇野 剛輝, 板倉 良輔, 木村 悠, 吉田 純, 山田 崇之, 鈴木 健一朗, 工藤 敏和, 小菅 玄晴, 中田 耕太郎, 久 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_139-S3_143
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は31歳, 男性. 平成25年6月, 気分不快が半日以上持続したため前医を受診し, wide QRS頻拍 (心拍数200/分, 北西軸右脚ブロック型) が認められ, 当院へ救急搬送となった. 頻拍はATPの急速静注では変化なく, その後自然停止した. 頻拍停止後, Ⅱ, Ⅲ, aVF, V5-6で顕著なT波の陰転化, aVL, V1-3でT波の増高が認められ, この変化は2日後に最大となり, その後徐々に軽減しながら1カ月以上残存した. 心エコーでは左室壁運動異常なく, 冠動脈CTでも冠動脈に有意狭窄を認めず, 虚血性心疾患は否定的であり, このT波変化は心筋メモリーによるものと判断した. 頻拍は左室起源の特発性心室頻拍と考えられ, ベラパミル内服にて8カ月間再発なく経過している.  心室頻拍停止直後ではなく, 2日後にT波変化が最大となり, 1カ月以上残存した心筋メモリーの症例を経験した. T波変化の極性は心室頻拍の極性と方向が一致しており, 頻拍停止後でも心筋メモリーを利用して心室頻拍の極性を予測できることがあると考えられた.
  • 飯田 剛幸, 森田 典成, 藤林 大輔, 上野 亮, 小林 義典
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_144-S3_149
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     60歳, 女性. 左脚ブロック, 下方軸の心室期外収縮 (PVC) および心室頻拍 (VT) に対しEPSを施行した. 右室流出路 (RVOT) 起源特発性PVC/VTと考えられ, PVC出現時に3次元マッピングにてRVOT中隔側でQRS波に20ms先行する局所電位を認め, 良好なPace Mapが得られたため, 同部へ通電するもPVCは消失しなかった. 次に大動脈冠尖のマッピングを行い, 右冠尖内 (RCC) 内でQRS波に35ms先行する局所電位を認め, 同部の通電にてPVCは一過性に抑制されたが再発した. 再度, RCC通電部対側のRVOT中隔にてマッピングを行い, 同対側部でQRS波から22ms先行する局所電位を認め, 同部の通電にてPVC/VTは消失し, 以後再発なく経過した. RVOTとRCC間の心外膜側起源と想定されるPVC/VT症例に対し, RVOTおよびRCCからのSandwichedアブレーションが奏功した1例を報告する.
  • 藤田 聡, 藤井 英太郎, 中村 真潮, 伊藤 正明
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_150-S3_153
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は36歳男性. 主訴は動悸・めまい・前失神. 心電図にて心室性期外収縮が認められ紹介. 心臓超音波検査では器質的心疾患なく, 心機能も正常. トレッドミルテストにて心拍数213回/分の持続性心室頻拍が誘発され, QRS波形は心室性期外収縮と同一であった. 心臓電気生理学的検査では, 心室性期外収縮をターゲットにマッピングを施行. 右室流出路からは, 胸部誘導は良好なペースマップが得られるものの, 四肢誘導が不良であった. 左冠尖からのマッピングでは, 低出力ペーシングにて四肢誘導のペースマップが一致するも胸部誘導が不良であった. 同部位から高出力ペーシングを施行すると胸部誘導が一致した. 同部位に対して通電するも心室性期外収縮が残存した. 対側にあたる右室流出路から比較的良好なペースマップが得られたため, 同部位へ通電したところ心室性期外収縮は消失した. 左冠尖と右室流出路の2カ所からの焼灼にて根治し得たため報告する.
  • 宗次 裕美, 丹野 郁, 川崎 志郎, 大西 克実, 大沼 善正, 菊池 美和, 伊藤 啓之, 小貫 龍也, 三好 史人, 箕浦 慶乃, 渡 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_154-S3_160
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は40台後半, 男性. 平成25年1月某日, 電車内でVFによりCPAとなった. 乗客, 駅員によりCPR施行され, AED計3回作動後心拍再開し当院救急搬送された. 緊急心臓カテーテル検査では, 冠動脈に有意狭窄認められず, 救命救急センターで低体温療法施行された. 入院後, VFの出現は認められなかったが, PVC, NSVTを頻回に認められたためEPS/アブレーション施行した. 入室時よりPVCが頻発していたが, 右室心尖部, 左室からのプログラム刺激ではVT/VFは誘発されなかった. PVCの最早期興奮部位は乳頭筋周囲であり, CARTO SOUNDを使用し乳頭筋を描出しペースマッピングを行った. 前乳頭筋, 後乳頭筋基部の周囲で良好なペースマッピングが得られたため, 同部位を中心にアブレーション施行し, その後プログラム刺激するもPVCは誘発されなくなった. 乳頭筋起源のPVCに対してCARTO SOUNDを使用しアブレーションを施行し, PVC/NSVTが誘発されなくなった症例を経験したので報告する.
  • 久嵜 香, 絈野 健一, 池田 悦子, 天谷 直貴, 池田 裕之, 福岡 良友, 森下 哲司, 佐藤 岳彦, 石田 健太郎, 荒川 健一郎, ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_161-S3_165
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例 : 34歳, 男性. 主訴 : 動悸. 心室性期外収縮 (premature ventricular contraction ; PVC) を指摘され当院を受診. ホルター心電図でPVC 26,000拍/日 (最大4連) を認めた. PVCは単形性, 左脚ブロック型+下方軸 (移行帯 : V3-V4誘導間) であり, その波形から右室流出路 (RVOT) 起源と考えられた. Activation mappingでRVOT中隔側にQRS起始部に36ms先行し, 良好なpace map score (10/12) を呈する部位を認めた. 同部位で数回, 焼灼したが, 焼灼開始約20秒でPVCは消失するも, 焼灼後, 数秒後に再発を繰り返した. 左室側のマッピングを施行. 左冠尖, およびaorto-mitral continuity (AMC) ~僧帽弁輪部位 (左前斜位45°像 : 11時-2時) では早期の興奮やgood pace mapは得られず, 焼灼を試みるもPVCは消失しなかった. 左室側での最早期興奮 (QRS起始部に30ms先行), および最適pace mapは大心静脈 (GCV) 遠位部であった. CARTOSOUND®下にRVOT焼灼部位と最短距離 (8mm) となる大動脈弁直下のAMC部位にカテーテルを留置したが, 局所興奮はQRS波起始部と同時であり, pace mapも不良であった. しかしながら同部位での焼灼開始10秒でPVCは消失し, その後再発は認めない. 同部位とGCV遠位部との距離は7mmであった.
  • 山下 光美, 沖重 薫, 岩井 慎介, 加藤 信孝, 長谷川 智明, 川口 直彦, 青柳 秀史
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_166-S3_171
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は65歳男性. 持続性心房細動に対する初回アブレーション目的で当院紹介となった. 選択的カテーテル挿入法を用いてMarshall静脈 (MV) への無水エタノール注入 (EI) を施行. その後, 両側肺静脈拡大隔離術に移行したが, MVへのEIにより左肺静脈後壁側は広範に障害されすでに伝導ブロック領域を形成しており, 前壁のみへの通電で左側上下肺静脈電気的隔離を達成し得た. さらにcontact force (CF) ガイド下にすでにEIにより部分的に傷害されたMVに沿った電位残存部位に対して順次焼灼を行い, CF 10grams以下の数回の通電によりMitral isthmus (MI) の両方向性伝導ブロックを完成し得た. 通常, MIの伝導ブロックの作成は難渋することが多く, 過度な出力の通電や心房壁への過度の押しつけは心タンポナーデのリスクになり得る. 本症例はMVへの化学的アブレーションを併用することにより, 比較的容易にMI伝導ブロックを安全に作成することが可能であると考えられた.
  • 中村 紘規, 内藤 滋人, 佐々木 健人, 南 健太郎, 中野 正博, 中谷 洋介, 池田 健太郎, 熊谷 浩司, 大島 茂
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_172-S3_181
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     流出路起源心室性不整脈では, focusとexitが異なる例にしばしば遭遇する. また左冠尖からのコンタクトフォース (CF) ガイド下通電により流出路のいかなる解剖学的領域が焼灼可能であるかは明らかでない.  症例1は53歳男性. Clinical PVCsと大心静脈のペーシング波形のtemplate-matching score (TMS) は96%, 局所電位はQRS onsetに26ms先行. 一方, 左冠尖ではTMS 79%, 局所電位の先行度は10msであったが, 平均CF 29g, Force-Power-Time Index (FPTI) 67280 Wgsの通電でPVCsは抑制, 平均CF 36g, FPTI 86652 Wgsで消失した. 症例2は60歳男性. Clinical PVCsと右室流出路のペーシング波形のTMSは96%, 局所電位はQRS onsetに20ms先行するも, 同部位における通電は無効. 一方, 左冠尖ではTMS 81%, 先行度は4msであったが, 平均CF 23g, FPTI 40020 Wgsの通電でPVCsは抑制, 平均CF 18g, FPTI 53460 Wgsで消失した. 両症例とも術翌日のMRIのSTIR像で心室中隔基部に高信号域を認めた.  Exit部位が異なり, 左冠尖で良好なマッピングが得られない心室中隔基部起源心室性不整脈に対するCFガイド下アブレーションが有効な症例に関して, その有効領域を含め報告する.
  • 井原 健介, 横山 泰廣, 白井 康大, 田尾 進, 佐々木 毅, 川端 美穂子, 笹野 哲郎, 平尾 見三
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_182-S3_190
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     いわゆる前中隔副伝導路を有する潜在性WPW症候群の正方向性房室回帰性頻拍に対して, カテーテルアブレーションを施行した2症例を経験したので報告する. 症例1は55歳男性. 右側で頻拍中にマッピングを施行したところ心房最早期興奮部位はHis束電位記録部位近傍に位置した. 同部位で通電を行い副伝導路離断を得たが, 通電中に早い接合部調律が出現してしまうため十分な焼灼が困難であり, 退院後に発作の再発を認めた. 2nd sessionで副伝導路伝導・頻拍の再発を認め, 1st sessionの所見から右側ではなく大動脈弁・無冠状動脈洞からCARTO sound systemを用いつつアプローチし副伝導路離断に成功した. 症例2は33歳男性. 頻拍中の心房最早期興奮部位ではHis束電位が記録されるため通電困難と考えられたため, 無冠状動脈洞から通電を行い副伝導路離断に成功した. 2症例ともに, 房室伝導障害なく経過しそれぞれ術後約1年および半年間の経過中に再発を認めていない. 前中隔副伝導路前中隔副伝導路を持つ潜在性WPW症候群はアブレーション困難例が多く, 無冠状動脈洞からのアプローチは有用な治療選択肢と考えられた. またCARTO sound systemを用いた副伝導路離断成功部位の検討でも前中隔副伝導路症例において無冠状動脈洞からのアプローチを検討することは合理的であると考えられた.
  • 中島 育太郎, 里見 和浩, 川上 大志, 執行 秀彌, 石橋 耕平, 宮本 康二, 岡村 英夫, 野田 崇, 相庭 武司, 小林 順二郎, ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_191-S3_198
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は66歳女性. 心室頻拍 (VT1 : 右脚ブロック・下方軸) のstormにてカテーテルアブレーションを施行. 左室後側壁および心尖部に心室瘤を認め, 後日心臓サルコイドーシスと診断. 心内・外膜とも心室瘤に一致して低電位領域を認め, 頻拍中は後側壁瘤に最早期興奮部位を示す巣状興奮パターンを呈した. 心外膜最早期部位では著明な分裂電位を認め, 同部位への通電で頻拍は停止. その後, VT2 (右脚ブロック・上方軸) が出現. VT2はエントレイメント現象を認め, 心尖部瘤の心外膜側で必須緩徐伝導部位が同定された. 挟部への通電でVT2は停止. 以後経過良好であったが, 数カ月後にslow VTが出現. 再度経皮的アプローチも検討したが, 外科的瘤切除の方針とした. 心内膜はpatchyに線維変性を認め, 心尖部瘤形成, 後側壁瘤パッチ閉鎖および心室瘤-僧帽弁輪間のCryoアブレーションを施行した. 以後心室性不整脈は出現せず経過良好である.
  • 中村 玲奈, 水上 暁, 大野 真紀, 鈴木 誠
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_199-S3_202
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は70歳男性. 陳旧性心筋梗塞にて冠動脈バイパス術後. 持続性心室頻拍に対しアブレーション後に左鎖骨下にICDを挿入し (Lumax 740 DR-T, Biotronic), dual coilの右室リードを低位中隔に留置し, DFTが問題ないことを確認した. 約1年後にVTに対する適切作動があり, ATP, 6 J, 14 J, 40 Jで停止せず, 2回目の40 Jにて停止し, high DFTに対する対応が必要となった. 薬物調整や除細動の伝達経路を変更しても十分な閾値は確認されなかった. 中隔の右室リードを心尖部へ変更しても効果はなく, 奇静脈にリードを追加したところ, RV→奇静脈+Canにて16 Jで除細動されることを確認した. High DFT患者において, 心臓後方にある奇静脈にショックリードを追加することにより, 良好な閾値を得られる1例を経験した. DFTを低下させる選択肢の一つとして有用であると考えられた.
  • 和田 匡史, 永瀬 聡, 田中 正道, 中川 晃志, 西井 伸洋, 河野 晋久, 中村 一文, 森田 宏, 伊藤 浩
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_203-S3_211
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     88歳男性. 陳旧性下壁心筋梗塞, バイパス手術・僧帽弁形成術・左室形成術・ICD植込み術後. 2012年12月, VTに対するICD頻回作動で入院. V1のR/S ratio=1で上方軸の薬剤抵抗性VTに対し第1回アブレーション (CA) を施行. 左室の下壁~下壁中隔移行部でのentrainmentでconcealed fusion, 頻拍周期 (TCL) =post pacing interval (PPI), Egm-QRS=Stim-QRSが得られた. 同部の通電でVTは停止しなかったが周囲へ追加通電後にVTは誘発不可能となった. しかし後日同波形のVTが再発. ICD頻回作動を認め第2回CA施行. 中心静脈 (MCV) にてconcealed fusion, TCL=PPI, Egm-QRS=Stim-QRSが得られ, 同部の通電でVT波形は変化. 追加通電後にVT誘発不可能となった. 以後, 同波形のVT再発なく無事退院となった.
  • 木村 昌弘, 春名 徹也, 岡野 光真, 鄒 佳苗, 森田 雄介, 飯田 淳, 南野 恵里, 加藤 貴雄, 中根 英策, 森島 学, 宮本 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_212-S3_218
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     46歳男性, 既往に前壁OMI. 3枝病変による不安定狭心症に対し, CABG施行. 術後6日後よりNarrow QRS PVCを契機に, QRS軸の変化する多形性VTが出現した. 各種治療無効でVT stormとなり, 術後13日目にtriggered PVCを指標に, アブレーションを施行. 低電位領域を左室内apex~midの前側壁に認めた. 同部位辺縁で, アブレーションカテーテル (Abl) 電極にて, 近位から遠位への興奮順序 (sequence) を伴うPurkinje電位記録部位においてSpike-QRS 56msの潜時を伴うPerfect mapを得た. 同部位で, 多形性VTの自然発作が記録され, Poly VT時, Abl電極でPurkinje電位を認め, 体表面QRSに64ms先行していた. 多形性VT中, Purkinje電位間隔の変動が心室電位間隔の変動に先行し, Abl電極のsequence変化とQRS軸の変化が同期して出現した. 同部位の通電開始で多形性VTが出現し, 通電中に停止した. 多形性VTの維持機序に障害Purkinje網でのリエントリ関与が示唆されたので, 報告する.
  • 福永 真人, 合屋 雅彦, 廣島 謙一, 林 健太郎, 牧原 優, 永島 道雄, 安 珍守, 山下 賢之介, 丹生 治司
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_219-S3_225
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は31歳男性, 13歳時に肥大型心筋症を指摘され, β-blockerにて経過観察されていた. 平成24年7月上旬, 冷汗を伴う息切れを自覚し近医を受診. 180bpm wide QRS tachycardia (右脚ブロック型, 右軸偏位) を認め, 前医にてカテーテルアブレーション (CA) を施行するもfailureし, ICD植え込み施行. 退院後5日間で8回のICD作動があり当院紹介.  右室からの2連期外刺激にてpolymorphic VTが誘発され, substrate mappingの方針とした.  左室心内膜側はnormal voltageでありLVAは認めず, 左室側壁~後壁にて比較的Pace mapが良好な部位を認めるものの, 心外膜からのbrakethroughであると考え, 心外膜側アプローチを行った.  心外膜側も概ねnormal voltageであったが, 左室側壁~後壁の中部に限局した低電位領域 (LVA) を認めた. 同部位内にて遅延電位 (DP) を認め, 対側は心内膜側にて比較的pace mapが良好であった部位と一致していた.  DP記録部位にてpace map施行すると, 下方 (心尖部) ではlatencyが長く, 上方 (基部) ではlatencyが短くなりともにgood pace mapであったため, それぞれentrance方向, Exit方向とする回路が想定された. RF#1にて回路の上流での通電にて局所のDPは消失し, 同部位以外のDPも消失した.  現時点で15カ月のフォローアップでもICD作動なく経過している.
  • 田中 宏明, 福田 芽森, 山田 亘, 池村 修寬, 宮田 宏太郎, 吉田 拓生, 稲川 浩平, 池上 幸憲, 谷本 耕司郎, 布施 淳, ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_226-S3_231
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     DCMの68歳男性. ○年○月にCRT-D植え込み. VT stormに対し, ○+3年○月にアブレーション (心内膜側) を施行. 左室中隔および側壁に低電位領域 (LVA) を認め, ICEでLVA領域に一致して壁内から心外膜側にかけて高輝度領域を認めた. VTはペースマップ (PM) を用いて良好なPM部位でアブレーション施行. アブレーション後再発を認めたが, ATPで停止可能で経過観察していた. ○月○日 (1回目のアブレーションより3カ月後) にVT stormを認め, 緊急入院. ○月○日, アブレーション (心内膜側・心外膜側) を施行した. 前回アブレーションした側壁LVAの心外膜側は正常波高であったが, perfect PM (S-QRS=40ms) およびNSVT時にQRSに先行する拡張期電位 (Egm-QRS=54ms) が得られ, VTのExitと考えられた. 心外膜側および心内膜側にアブレーションを行い, clinical VTは誘発不能となった.
  • 高木 泰, 原田 智雄, 高野 誠, 中野 恵美, 山田 麻里可, 鈴木 規雄, 古川 俊行, 明石 嘉浩, 西尾 智, 滝村 由香子, 宮 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_232-S3_238
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は68歳男性. 2012年6月ICD頻回作動, 薬剤抵抗性心室頻拍 (VT) のためカテーテルアブレーション施行. Entrainment mappingにより持続するVT (右脚ブロック型下方軸周期330msec) のexitを同定したが, 5種類のVTが誘発され, 根治せず終了となった. 抗不整脈薬にて経過観察したが2013年6月再びICD作動, 2回目のカテーテルアブレーション施行となった. 2回目は洞調律中にコンタクトフォースカテーテル (J & J社製) を用い, より正確なvoltage mappingから広範囲scarを同定. Scar内に多くのlate potentialが存在, S-QRS時間の延長 (180msec) を伴う異なるexitも同定され数種類のVTの必須緩徐伝導路と考えた. Exitの焼灼, scar内を線状焼灼後, clinical VTは誘発不能となった. 最終的にscar周囲を旋回する遅いVT (周期460msec) が誘発されたがscarから僧帽弁輪まで線状焼灼を追加, VTの誘発は完全に抑制された. 以後, VTの再発を認めず, 経過は良好である.
  • 佐々木 直子, 奥村 恭男, 渡辺 一郎, 永嶋 孝一, 園田 和正, 古川 力丈, 高橋 啓子, 磯 一貴, 大久保 公恵, 中井 俊子, ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_239-S3_246
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は, 51歳, 男性. 6歳時に心室中隔欠損に対する根治術を施行された. 38歳時に他院で心房頻拍および通常型心房粗動と診断され, 2度カテーテルアブレーション (CA) を施行されている. その際, 心機能低下を指摘され, 49歳時より心室頻拍 (VT) を生じるようになり, それに伴う心不全増悪を繰り返した. 他院でVTに対するCAを施行したが, 4カ月後, 左脚ブロック, 下方軸と左脚ブロック, 上方軸の2種類のVTを認めたため, 精査加療目的に当院へ入院となった. 遅延電位は3項目陽性であり, 心臓MRIで左室中部の前中隔右室付着部および後下壁に遅延Gd造影 (LGE) を認め, 18F-FDG PET上も左室LGEと一致する部位に限局的な異常集積を認めた. 以上の所見から基礎心疾患として心サルコイドーシスが疑われた. 心臓電気生理学的検査では右室流出路自由壁側にcentral isthmusを有するVT1と右室下側壁の瘢痕領域を回路とするVT2が誘発され, VT1はCAにより停止したがVT2は完全には抑制できなかった. 心室再同期療法 (CRT-D) を導入し, 退院後ステロイド治療を開始した. 以後, VT再発および心不全増悪は認めていない.
  • 大野 誠, 吉賀 康裕, 上山 剛, 福田 昌和, 加藤 孝佳, 文本 朋子, 清水 昭彦, 矢野 雅文
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_247-S3_252
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は36歳男性. 28歳時に拡張型心筋症と診断されていた. 2013年7月に眼前暗黒感を伴う前失神発作が出現するようになり, 心電図で心室頻拍 (VT ; 左脚ブロック+左軸偏位) を認めた. アミオダロン点滴によりVTは抑制されたが, 心室性期外収縮 (PVC) が頻発していた. 心エコー・MRI上右心系優位の著明な心拡大と収縮不全を認め, 心電図にて右側胸部誘導の再分極異常等の所見を認めたことから不整脈原生右室心筋症と診断した. アミオダロン投与下でカテーテルアブレーションを施行, 洞調律中にvoltage mapを作成したところ右室流入路側壁から下壁にかけて低電位領域を認めた. 検査中VTが誘発されなかったことからclinical VTと同一波形のPVCを標的にペースマッピングを行ったところ右室側壁低電位領域内のisolated delayed componentを認める部位でペースマッピングが良好であった. 同領域を中心に, さらに低電位領域を横断して三尖弁輪まで線状焼灼を行った. 術後PVCは著明に抑制され, VTの再発はみられてない.
  • 趙 麻未, 住友 直方, 加藤 雅崇, 渡邉 拓史, 小森 暁子, 阿部 百合子, 神山 浩, 鮎沢 衛, 高橋 昌里, 三澤 正弘, 大塚 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_253-S3_257
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     5歳, 女児. 生後1カ月で心房中隔欠損症 (ASD) と診断され, 生後6カ月時に心室性期外収縮 (PVC) を指摘された. ASDのパッチ閉鎖術 (2歳10カ月) 後, PVCによる心不全と診断され, 3歳11カ月からflecainide, 4歳からmetoprolol内服を追加した. 4歳9カ月から内服をメキシレチン, メトプロロールに変更されたが心拡大, 心機能低下, 軽度BNP上昇 (56.1pg/mL) を認め, 抗不整脈薬で改善を認めないためカテーテルアブレーション目的に入院した. 心電図では, RBBBパターン, QRS電気軸100°のPVCを認める. CXRでCTR 0.56, 心エコーで心室中隔の動きは悪く, EF 48%, 右房・右室, 肺動脈の著明な拡大を認めた. activation mapおよびpace mappingにより左室側壁を起源とするPVCと考えられ, 通電によりPVCは消失した. 術後約7カ月でBNP<5.8pg/mL, CTR 0.56, EF 79%と改善した. PVCに伴う心不全を発症した稀な幼児例と考えられ, 文献的考察を含め報告する.
  • 林 洋史, 村田 広茂, 宮内 靖史, 林 明聡, 岩崎 雄樹, 淀川 顕司, 高橋 健太, 植竹 俊介, 坪井 一平, 清水 渉, 新田 ...
    2014 年46 巻SUPPL.3 号 p. S3_258-S3_263
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/10/26
    ジャーナル フリー
     症例は15歳, 男性. Gorlin症候群 (基底細胞癌, 心臓腫瘍) に合併した心室頻拍 (VT) の頻回発作を認め, アミオダロン内服, アブレーション施行するも抑制できず, 手術目的に当院転院した. 術前心内膜マッピングでは, 左室後壁に腫瘍浸潤に一致する18cm2の広範囲の低電位領域を認め, その辺縁では全周性に遅延電位が記録された. プログラム刺激により誘発されたVTは2種類. VT#1 (RBBB, 左軸偏位, CL300ms) は, 低電位領域の後中隔側で, VT#2 (RBBB, 右軸偏位, CL300ms) は後側壁側でpace mapが近似した. 開胸下心外膜マッピングでも低電位領域辺縁を最早期とする多種類のVTが誘発され, 腫瘍切除が困難であったため腫瘍を隔離するように凍結凝固し頻拍を抑制しえた. 低電位領域辺縁の病理では線維腫の浸潤と心筋の錯綜配列様構造異常を認め, これが本頻拍の不整脈基質である可能性が示唆された.
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