抄録
症例 : 46歳男性. 主訴 : 突然の左前腕のしびれおよび冷感. 現病歴 : 発作性心房細動を指摘されているが, CHA2DS2-VAScスコアは0点であったため, 抗凝固療法は行われておらず, β遮断薬の投与のみで経過観察中であった. 2013年2月, 仕事中に突然, 左前腕のしびれと冷感を自覚し, 当院を受診. 血管エコーで, 左上腕動脈の遠位部で血栓閉塞していると考えられた. 来院時の心電図は洞調律であり, Dダイマーは陰性であった. 経食道エコーでは, 左心耳・左房内に血栓を認めず, モヤモヤエコーも認めなかった. 大動脈のプラークも指摘できなかった. 橈骨動脈は軽度だが触知可能であり, 抗凝固療法で経過をみた. 上腕動脈の血栓は, 入院翌日には尺骨動脈へ移動し, 尺骨動脈の遠位は橈骨動脈から逆行性に血流を認めたため, 抗凝固療法を継続し, 軽快した. 低リスク群であっても, 左心耳の形態によっては, 脳梗塞のリスクが増加することが報告されており, 本症例は「Cauliflower型」といわれる塞栓症をきたしやすい形態であった. 心房細動患者の抗凝固療法については, CHADS2などのスコアに加えて, 左心耳形態も考慮に入れる必要があると考えられる.