心臓
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一般演題
塞栓症リスクを有さない発作性心房細動患者に, 左上腕動脈の急性血栓閉塞を認めた1例
八木 直治大塚 崇之有田 卓人妹尾 恵太郎鈴木 信也相良 耕一山下 武志
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2014 年 46 巻 SUPPL.3 号 p. S3_90-S3_94

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抄録
 症例 : 46歳男性.  主訴 : 突然の左前腕のしびれおよび冷感.  現病歴 : 発作性心房細動を指摘されているが, CHA2DS2-VAScスコアは0点であったため, 抗凝固療法は行われておらず, β遮断薬の投与のみで経過観察中であった. 2013年2月, 仕事中に突然, 左前腕のしびれと冷感を自覚し, 当院を受診. 血管エコーで, 左上腕動脈の遠位部で血栓閉塞していると考えられた. 来院時の心電図は洞調律であり, Dダイマーは陰性であった. 経食道エコーでは, 左心耳・左房内に血栓を認めず, モヤモヤエコーも認めなかった. 大動脈のプラークも指摘できなかった. 橈骨動脈は軽度だが触知可能であり, 抗凝固療法で経過をみた. 上腕動脈の血栓は, 入院翌日には尺骨動脈へ移動し, 尺骨動脈の遠位は橈骨動脈から逆行性に血流を認めたため, 抗凝固療法を継続し, 軽快した. 低リスク群であっても, 左心耳の形態によっては, 脳梗塞のリスクが増加することが報告されており, 本症例は「Cauliflower型」といわれる塞栓症をきたしやすい形態であった. 心房細動患者の抗凝固療法については, CHADS2などのスコアに加えて, 左心耳形態も考慮に入れる必要があると考えられる.
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© 2014 公益財団法人 日本心臓財団
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