抄録
症例は75歳男性. 肥大型心筋症, 高血圧症で近医通院中であった. 2013年2月に両下腿浮腫を自覚, これを契機に心房細動およびうっ血性心不全の診断に至った. 抗凝固療法は, 推算CCr 73mL/minであったが70歳以上のためタビガトラン220mg/日とされた. 心房細動は持続し, 4月に除細動目的で当院紹介となった. 経食道心エコーで左心耳に径14×19mmの浮動性腫瘤を認めた. 血栓を疑い, タビガトランを休止し, ヘパリンとワルファリンを投薬した. 本症の血栓はサイズ・可動性の点からも塞栓症のリスクが高く, 早期の外科的介入が必要と考えた. 心臓血管外科のもと左心耳内腫瘤摘出術, Maze Ⅳ術他を施行された. 腫瘤は一部器質化を伴う血栓であった. 除細動前の経食道心エコーで初めて血栓が明らかになった. 左心耳内血栓の発症率および予測, 左心耳内血栓への新規経口抗凝固薬NOACによる治療報告について文献的考察を踏まえて報告する.