心臓
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[症例]
著明な心筋壁肥厚と心膜液貯留を呈しながら, ステロイド無投与で改善した急性好酸球性心筋炎の1例
羽渓 優森野 加帆里乙井 一典小澤 徹堂本 康治岩田 幸代武居 明日美稲本 真也大西 一男出射 由香井上 信孝
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2015 年 47 巻 1 号 p. 42-48

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抄録

 症例は20歳代女性. 主訴 : 発熱, 胸痛. 現病歴 : 38°Cの熱発を認め, 翌日から胸痛を自覚し近医受診. この際, 心電図異常を指摘され本院紹介. 入院時現症 : 意識清明, 血圧84/54mmHg, 脈拍数122/分 整. 心音 : 3音gallop. 呼吸音 : 清. 心電図 : 洞性頻脈, 低電位, aVR以外の誘導で, STの軽度上昇を認めた. 胸部X線 : 心陰影は軽度拡大. 血液検査 : RBC 437 x104/mm3, WBC 16880/mm3 (好中球76%, リンパ球11%, 好酸球5%). 心エコー図にて, 左室壁運動の低下, 左室壁の浮腫状の肥厚, 全周性の心膜液貯留を認め, 急性心筋炎と診断. 一時, 収縮期血圧が70mmHgと低下し, ドブタミンによる循環動態の支持を必要とした. 心筋生検にて, 心筋細胞の断裂, 間質の浮腫, 好酸球の高度な浸潤を認め, 急性好酸球性心筋炎と診断. 経過中, 末梢血好酸球の増多を認めた. その後, ステロイド無投与にても心筋壁運動の改善, 心筋壁肥厚の軽減を認め, 退院となった. 心筋炎自体の急性期死亡率は38%と報告されているが, 好酸球性心筋炎では7%程度であるとされている. 好酸球性心筋炎に対して免疫抑制薬の有効性を前向きに検討した臨床研究の報告はなくステロイドの有効性に関しては確立されていないが, 高度な心機能障害や, 重篤な不整脈をきたす場合は, ステロイド療法も検討すべきであるとされている. 今回, ステロイド無投与にても心機能の改善を認めた1例を経験した. 好酸球性心筋炎は多彩な病状を呈することが示唆された.

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© 2015 公益財団法人 日本心臓財団
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