心臓
Online ISSN : 2186-3016
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47 巻, 1 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(生活習慣から循環器疾患を予防し健康寿命を延伸する)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 相澤 啓, 小西 宏明, 齊藤 力, 三澤 吉雄
    2015 年 47 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     当院における急性心筋梗塞 (AMI) 後の心室中隔穿孔 (VSP) の検討を行った. 1999~2012年にかけて16例のAMI後VSPの症例に対してinfarct-exclusion法を行った. 患者背景は男性10例, 女性6例, 平均年齢は70.2±9.9歳であった. VSPの診断から手術までは平均2.2±6.6日であった. 16例中15例 (93.8%) が前下行枝領域を責任病変とする前壁心筋梗塞であり, 12例が1枝病変, 4例が2枝病変であった. 術前に左室自由壁破裂を伴った症例は3例であった. 平均手術時間は344±113分で4例に冠動脈バイパス手術 (CABG) を併施した. 在院死亡は5例 (31.3%) であった. 1例は術前から罹患していた大腸癌のため死亡した. 3例は術後の低心拍出症候群 (LOS) で死亡し1例は遷延するLOSの経過中に肺炎を併発し敗血症のため死亡した. 3例 (18.8%) に遺残短絡を認め, このうち1例は心不全の進行を認めたため再手術を必要とした.  術後LOSの克服, 遺残短絡を残さない工夫が今後の課題と考えられた.
Editorial Comment
[臨床研究]
  • 高橋 辰郎, 申 範圭, 森 光晴, 川口 新治
    2015 年 47 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     橈骨動脈 (RA) を使用した冠動脈バイパス術 (CABG) の臨床成績に加え, RAの早期および遠隔期開存性を検討した. 2005年4月から2012年12月にRA使用のCABGを166例 (男/女=135/31, 平均年齢65.4歳) に施行した. 入院死亡は1例 (0.6%). 術後5年生存率は93.1%, 5年心事故回避率は97.9%. 早期開存性を158例で評価し, RA末梢側吻合数232箇所の開存率は100%であった. 同時に使用した内胸動脈 (ITA) と大伏在静脈 (SV) の早期開存率は100% (180/180), 95.3% (203/213) で, SVが劣った (p=0.001). 遠隔期開存性を (44±20カ月) を103例で評価し, RAの開存率は93.3% (139/149) で, ITAは98.2% (112/114), SVは88.1% (118/134) であった. RAの開存率はITA, SVとの間に差を認めなかった (p=0.06, 0.12). RAの吻合部位別開存率は, 左前下行枝100% (4/4), 対角枝100% (39/39), 左回旋枝91.1% (81/90), 右冠動脈93.8% (15/16) で, 対角枝と左回旋枝の間で差を認めた (p=0.04). RAグラフトの開存率は早期および遠隔期ともに総じて良好であった. 吻合部位により開存性の差を認め, グラフトデザインを考慮して使用すれば, 有用な動脈グラフトである.
[症例]
  • 羽渓 優, 森野 加帆里, 乙井 一典, 小澤 徹, 堂本 康治, 岩田 幸代, 武居 明日美, 稲本 真也, 大西 一男, 出射 由香, ...
    2015 年 47 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     症例は20歳代女性. 主訴 : 発熱, 胸痛. 現病歴 : 38°Cの熱発を認め, 翌日から胸痛を自覚し近医受診. この際, 心電図異常を指摘され本院紹介. 入院時現症 : 意識清明, 血圧84/54mmHg, 脈拍数122/分 整. 心音 : 3音gallop. 呼吸音 : 清. 心電図 : 洞性頻脈, 低電位, aVR以外の誘導で, STの軽度上昇を認めた. 胸部X線 : 心陰影は軽度拡大. 血液検査 : RBC 437 x104/mm3, WBC 16880/mm3 (好中球76%, リンパ球11%, 好酸球5%). 心エコー図にて, 左室壁運動の低下, 左室壁の浮腫状の肥厚, 全周性の心膜液貯留を認め, 急性心筋炎と診断. 一時, 収縮期血圧が70mmHgと低下し, ドブタミンによる循環動態の支持を必要とした. 心筋生検にて, 心筋細胞の断裂, 間質の浮腫, 好酸球の高度な浸潤を認め, 急性好酸球性心筋炎と診断. 経過中, 末梢血好酸球の増多を認めた. その後, ステロイド無投与にても心筋壁運動の改善, 心筋壁肥厚の軽減を認め, 退院となった. 心筋炎自体の急性期死亡率は38%と報告されているが, 好酸球性心筋炎では7%程度であるとされている. 好酸球性心筋炎に対して免疫抑制薬の有効性を前向きに検討した臨床研究の報告はなくステロイドの有効性に関しては確立されていないが, 高度な心機能障害や, 重篤な不整脈をきたす場合は, ステロイド療法も検討すべきであるとされている. 今回, ステロイド無投与にても心機能の改善を認めた1例を経験した. 好酸球性心筋炎は多彩な病状を呈することが示唆された.
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 伊從 敬二, 高山 豊, 三森 義崇, 有泉 憲史, 橋本 良一
    2015 年 47 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     IgG4関連疾患は全身性の炎症性疾患として注目されているが, 複数の臓器に対する治療の報告は少ない. 今回, 自己免疫性膵炎と炎症性腹部大動脈瘤を合併したIgG4関連疾患を経験した. 症例は75歳男性. 全身倦怠感と皮膚黄染のため来院し, T-Bil 24.5mg/dLと上昇していた. CTで膵はび漫性に腫大しソーセージ様を呈していた. 胆管の拡張と胆嚢の緊満を認め, 自己免疫性膵炎による胆管閉塞と診断した. また, 炎症性腹部大動脈瘤を認め, 瘤径は49mmで外膜の肥厚は6mmであった. 右水腎症を認め, 動脈瘤の炎症が右尿管を巻き込んだためと考えた. 経皮的胆嚢ドレナージを行った後, プレドニゾロン30mg/日の内服を開始した. 3カ月後のCTで膵の腫大と胆管の拡張は消失した. 動脈瘤の外膜の肥厚は3mmと減少したが, 右腎は萎縮した. プレドニゾロンを漸減して中止し, 初診から1年2カ月後に人工血管置換術を行った. この際, 血清IgG4の上昇を認めなかったが, 瘤壁の標本でIgG4陽性形質細胞は25-41/HPF, IgG4/IgG陽性細胞比は77.7%で, IgG4関連疾患と診断した. 術後, 後腹膜の肥厚は減少し, 4年6カ月経過したが, 自己免疫性膵炎の再燃もない.
[症例]
  • 櫃本 竜郎, 井上 勝次, 飯尾 千春子, 藤本 香織, 河野 珠美, 藤井 昭, 上谷 晃由, 永井 啓行, 西村 和久, 鈴木 純, 大 ...
    2015 年 47 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     症例は72歳, 女性. 当院膠原病内科で全身性エリテマトーデスに合併した血球貪食症候群に対して化学療法 (CHOP療法) を施行後に心不全を発症しアドリアマイシン心筋症と診断された. また, 心エコー上中等度の大動脈弁狭窄症を指摘された. 以後心不全標準治療を継続したが, 約10年の経過で徐々に心機能低下と大動脈弁狭窄症の重症度が進行し, 心不全の増悪による入退院を繰り返した. 内科的治療の限界と判断し, 外科的大動脈弁置換術や経カテーテル的大動脈弁植込み術 (Transcatheter Aortic Valve Implantation ; TAVI) の適応を診断するため, 低用量ドブタミン負荷心エコー検査を行った. 本症例は偽性重症大動脈弁狭窄症の可能性があるため, Blaisらが提唱した予測有効大動脈弁口面積 (projected effective orifice area ; EOAproj) 測定したところ, EOAproj 1.18cm2で境界所見であった. 胸部CT検査から求めた大動脈弁石灰指数 (Agatston's score) は659であり, 強い石灰化は指摘できなかった. カテコラミンを含む心不全治療を行ったが, 心不全の改善を認めず死亡した. 剖検を行った結果, 大動脈弁は弁腹の石灰化を認めたが, 弁尖の変性は軽度であった. 今回われわれは低左心機能を伴う大動脈弁狭窄症例におけるドブタミン負荷心エコー検査の有用性, 限界について検討したので報告する.
[症例]
Editorial Comment
[症例]
[症例]
  • 木村 俊之, 栗山 根廣, 松山 明彦, 足利 敬一, 相良 秀一郎, 古堅 真, 仲間 達也, 井上 洋平, 福島 裕介, 緒方 健二, ...
    2015 年 47 巻 1 号 p. 76-83
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     症例は65歳女性. 急性心筋梗塞にて当院へ救急搬送され, 左前下行枝の完全閉塞に対しステント留置を行い良好な再疎通が得られた. 心エコー図検査にて心尖部の瘤化と壁在血栓形成を認め, ヘパリン, ワルファリンによる抗凝固療法を継続していたが, 第12病日には30×40mm大の巨大心尖部血栓となった. さらに肺塞栓症や腎梗塞など, 全身の動静脈系にも血栓症を認め, 血小板数の低下 (23.9×104→7.1×104/μL) とあわせてヘパリン起因性血小板減少症 (HIT) を疑い, ヘパリン投与をただちに中止. のちにHIT抗体陽性を認め, HITとして典型的な臨床経過であることからHITと診断した. アルガトロバン持続投与後は新規血栓症の発症なく血小板数も回復したが, 心尖部の巨大血栓は退縮なく, さらに慢性期に行った冠動脈CT検査ではステント内完全閉塞が認められた.  再血行再建術の時期およびその方法には慎重な検討を要したが, 本症例ではアルガトロバン持続投与下にHIT抗体の陰性化を確認したのち, 第81病日にヘパリン投与下体外循環での冠動脈バイパス術, 左室形成術および血栓摘除術を行い, HITの再発や合併症なく手術に成功した. HIT患者で人工心肺下開心術が必要な場合, HIT抗体陰性化を確認できればヘパリンを用いた体外循環法がアルガトロバン使用よりも安全と考えられる.
Editorial Comment
[症例]
  • 坂田 鋼治, 平野 秀治, 漆間 雅人, 長友 美達, 竹永 誠
    2015 年 47 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     症例は41歳女性. 2013年4月安静時胸痛あるも1時間で改善. 翌日月経出血あり. その2日後に急性前壁心筋梗塞を発症し, 救急搬送された. 緊急冠動脈造影では, 左前下行枝の#7に解離を認め, 冠動脈解離に伴う心筋梗塞と判断した. 冠動脈疾患の原因となる基礎疾患は認めなかった. 経皮的冠動脈形成術を施行し, 解離部位にステントを留置した. 12病日に施行した冠動脈CTでは左前下行枝の解離腔は消失していた. 17病日の冠動脈造影では血流は良好で, 6カ月後の冠動脈造影でも再狭窄, 再解離を認めず経過は良好であった.  月経中に冠動脈解離を発症した症例を経験した. 文献的考察に加えて, 国内の若年女性の特発性冠動脈解離の症例についてアンケート調査を施行した結果も含めて報告する.
[症例]
  • 音羽 勘一, 三田村 康仁, 中野 学
    2015 年 47 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
     症例は80歳, 女性. 幼少時に心雑音を指摘され, Fallot四徴症と診断された. 心房細動, 心不全も指摘され, 手術を勧められていたが本人の同意が得られず内服治療を続けていた. 67歳時に心不全症状が増悪し, 68歳時に在宅酸素療法が開始され, 症状は改善したが労作時のチアノーゼを認めていた. 79歳時に無酸素発作による意識消失発作で入院した. 薬物治療と酸素療法を継続していたが, 無酸素発作による意識レベルの低下, 血圧低下を認めるため, ベラパミルの内服を中止し, 利尿薬を減量したところ無酸素発作は改善した. 80歳時に意識消失後に転倒し, 腰椎圧迫骨折を受傷した. 腰痛により無酸素発作が誘発されたが, 塩酸モルヒネとカルベジロールの投与で改善した. その後, 気道感染の合併と認知症の悪化を認め, 徐々にADLが低下し, 最終的には心不全症状が悪化し80歳で死亡した. 未手術で80歳まで生存したFallot四徴症の報告は極めて稀であり, 文献的考察を加え報告する.
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