心臓
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[症例]
短期間で成長したと推定される左房粘液腫の1症例
籏 厚中井 康成大下 晃川上 秀夫松岡 宏
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2015 年 47 巻 11 号 p. 1330-1336

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抄録

 心臓粘液腫は初期症状に乏しく発見後直ちに手術が行われることが多いためその成長速度は明確にされていない. 今回, 他疾患の経過観察中にCTで偶然発見され出現から手術治療までの期間がretrospectiveに推定された症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

症例 : 74歳女性. 5年前からの膵嚢胞経過観察中に腹部造影CTで偶然心臓腫瘤を指摘され当科紹介となった. 自覚症状および入院時現症に特記すべき異常はなかった.

入院時検査 : CRP 0.63mg/dL, インターロイキン8 : 12pg/mL, インターロイキン6 : 9pg/mLは軽度上昇, 血清蛋白分画はA/G比1.36と軽度低下を認めた. 胸部X線写真で異常はなく, 心電図は洞性頻脈と左室肥大を認めた. 経食道心エコー検査では卵円窩下方に茎部がある左心房内腫瘍を認めた. 僧帽弁口への流入は認めなかった.

手術 : 人工心肺下に心停止とし, 右心房経由で内部に出血部分を伴う表面平滑な腫瘍を心房中隔ごと一塊に切除した. 術後経過は順調であった.

考察 : 本症例では2004年より3~6カ月間隔でCTあるいはMRIが撮影されていたが, 2008年3月のMR胆管膵管撮影で腫瘍の一部が初めて確認された. 2009年2月の手術時標本では4.9×3.9cmの大きさに成長しており内部に出血を伴っていた. 腫瘍内出血により比較的急速な増大をした可能性が考えられた.

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