2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_74-S1_78
70歳代女性. 糖尿病腎症による維持透析を行っており, 脳梗塞後遺症による右不全麻痺がある. 1カ月前から労作時胸痛が出現しはじめ, 徐々に増悪したため前医外来を受診, 増悪型労作性狭心症を疑われ前医に入院, 当院に精査加療目的に転院になった. 冠動脈造影では左前下行枝の近位部#6に90%の狭窄を認めた. 石灰化の強い病変であったためバイパス治療も考慮したが, ハイリスクであったため血管内治療を行う方針とした. 左鼠径部を穿刺し手技を開始し, 高度石灰化病変でロータブレータ®を使用した後に薬剤溶出性ステントを留置し手技を終了した. 帰室後からショック状態になり, 左下腹部の圧痛と軽度腫脹を認めた. 血管外出血を疑い造影CTを施行したところ, 血管外出血部分は認めるものの出血部位は同定できず, カテーテルでの血管造影を施行した. 左下腹壁動脈根部から出血を認め同部位にコイル塞栓術を施行し止血に成功した. 止血直後から血圧上昇し, その後良好な経過を辿った. 下腹壁動脈出血を合併しショックになった透析患者の1例を経験したので報告する.