2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_69-S1_73
たこつぼ心筋症は1990年に本邦よりDoteとSatoらが初めて報告し, ballooningとも称される心尖部の逆収縮と基部の過収縮による冠動脈支配領域に一致しない局所壁運動異常が特徴的で, 保存的治療で回復する比較的良性の疾患とされてきた1) . しかし心不全や重症不整脈, 心内血栓による塞栓症などにより死亡する例も報告され, 必ずしも予後良好ではないことも明らかにされつつある2) . 左室自由壁破裂や心室中隔穿孔 (Ventricular septal rupture : 以下VSR) は急性心筋梗塞後の重篤な合併症として知られるが, たこつぼ心筋症後の発症も報告されている3~5) . 今回たこつぼ心筋症後のVSRの症例を経験し準緊急手術を行ったものの救命できなかった症例を経験したので報告する.