2015 年 47 巻 SUPPL.2 号 p. S2_163-S2_169
症例は81歳男性. 朝食後に持続する頻脈, 動悸を主訴に来院. ホルター心電図では, PVC後に開始するnarrow QRS short RP'頻拍 (100-110bpm) を認めた. 頻拍の鑑別・治療のためにEPSを行った. 無投薬下に洞周期1000ms, AH 132ms, HV 57ms. 右房連続刺激480msで2 : 1房室ブロック, 右房期外刺激800/580msでjump up, 800/540msでAH blockとなった. 右室刺激で室房伝導は認めず. イソプロテレノール負荷下に右房連続刺激でdouble responseを認め, P波に先行する右室単発期外刺激により, 洞調律 (550ms) +AH 360msで1 : 1室房伝導する頻拍を認めた. 頻拍のメカニズムとして洞性頻脈中にslow pathway伝導することにより, fast pathwayは先行する拍の不応期にあたり伝導ブロックとなり, slow pathwayの1 : 1伝導が維持されているものと考えた. そこで頻拍中に右房単発期外刺激を行いHis束のリセットを行うことにより, fast pathwayの1 : 1伝導に復帰するpeel back現象を確認した. 洞性頻脈時に安定してslow pathwayを伝導したため, 発作性上室性頻拍, 心房頻拍との鑑別を要した興味深い症例を経験したため報告する.