心臓
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第27回 臨床不整脈研究会
肥大型心筋症に合併した僧帽弁輪起源の心房頻拍の1例
伊藤 かな子岩崎 雄樹藤本 雄飛岡 英一郎高橋 健太坪井 一平淀川 顕司林 明聡宮内 靖史清水 渉
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2015 年 47 巻 SUPPL.2 号 p. S2_85-S2_91

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抄録

 症例は, 72歳男性. 肥大型心筋症, 発作性心房細動のため近医通院していたが, 動悸を自覚しホルター心電図で症状に一致してLong R-P'頻拍が認められ, カテーテルアブレーション目的に当院へ紹介となった. 心臓電気生理学的検査で, 心房単発期外刺激によるjump up現象は認めず, 右室刺激中の心房最早期興奮部位をHis束領域に有する弱い逆行伝導を認めた. 心房頻回刺激で頻拍周期460msecのLong R-P'頻拍が誘発され, 頻拍中の心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部より約2cm遠位であった. 頻拍中に左心房内をmappingしたところ, 左房内僧帽弁輪6時方向からの巣状興奮パターンを呈し, 最早期興奮部位では冠静脈洞内で得られる電位よりも26msec先行する分裂電位が記録された. 心房内各所からのエントレインメントペーシングは, 最早期興奮部位でのみ刺激後の復元周期が頻拍周期に一致した. 同部位で頻拍中に通電を行い頻拍は約8秒で停止したが, イソプロテレノール負荷で再発し, 左房心内膜側からの追加通電を行ったが再発を繰り返した. 左房心内膜側の最早期興奮部位の対側の冠静脈洞側でより早期性のある電位が記録され同部位への通電を行い, 約1秒で頻拍は停止し以降誘発不能となった. 心内膜側, 心外膜側の両者からの焼灼が有効であった僧帽弁輪を起源とする巣状心房頻拍の1例を経験した.

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© 2015 公益財団法人 日本心臓財団
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