心臓
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第28回 心臓性急死研究会
冠動脈攣縮による左右冠動脈同時閉塞をきたし心肺停止に陥った1例
—心房細動アブレーション手技中の致死的合併症—
麻生 明見中村 俊博荒木 将裕浦祐 次郎目野 恭平高田 優起江島 恵美子西原 正章森 隆宏竹中 克彦沼口 宏太郎村里 嘉信冷牟田 浩司
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2016 年 48 巻 SUPPL.1 号 p. S1_24-S1_32

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抄録

 症例は50歳代男性. 発作性心房細動と心房粗動に対するカテーテルアブレーション目的に当科入院となった. 入院前より持続していた心房粗動は三尖弁輪下大静脈間峡部のアブレーションで洞調律に復帰し, 引き続き心房細動に対する肺静脈隔離術を行う予定であった. 心房中隔穿刺と左右肺静脈造影を行った後, 肺静脈隔離の通電を開始しようとしたところで心電図上QRS幅が著明に拡大し急速に血圧が低下, 徐脈状態に陥ったため心肺蘇生を開始した. 経皮的心肺補助装置を装着後に行った冠動脈造影では, 左右冠動脈はいずれも起始部で完全閉塞していた. 冠血行再建術の準備中, 左冠動脈に冠血管拡張剤を投与すると血流再開が得られ, 右冠動脈も同様に冠血管拡張剤投与で血流再開し血行動態は回復した. 今回の事象の原因は左右冠動脈攣縮による全心臓虚血および急性循環虚脱と判断した. 心房中隔穿刺に伴う冠攣縮の報告は散見されるが, 通常心電図のST上昇で気づかれ, 速やかな冠血管拡張剤の投与で回復する. 本症例では左右冠動脈に高度攣縮が同時に生じ, 心電図上ST上昇ではなく伝導障害と徐脈という電気的異常を呈し, 重篤な病態に陥ったと考えられる.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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