2016 年 48 巻 SUPPL.1 号 p. S1_5
症例は50歳代男性. 前胸部・頚部の不快感のため他院を受診し, 冠動脈CTでLAD#7・#9に中等度狭窄を認めたので, アスピリン, アテノロールなどの投薬を受けた. その4日後, 買い物中に院外心停止となり, 目撃者による心臓マッサージが施行され, AED作動により心室細動が停止して自己心拍再開となった. 当院来院後の心電図は洞調律で, V2に早期再分極を認めたが, 心エコーでは異常を認めなかった. 緊急CAGではLADの中等度狭窄を認めたが, 冠血流は正常で急性冠症候群は否定的であった. 蘇生8日後に施行した冠攣縮誘発試験では, 冠動脈三枝に冠攣縮が誘発された. 最大冠拡張下のLADのFFRは0.80以上で有意狭窄ではなかった, 15日後の心臓電気生理学的検査では再現性のある心室性不整脈は誘発されず, ピルジカイニド負荷試験も陰性であった. β-blockerは冠攣縮増悪を来たしうる薬剤であるが, β-blocker内服開始4日後に心室細動となった冠攣縮性狭心症の症例を経験したので報告する.