心臓
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第28回 心臓性急死研究会
AEDによる除細動での救命後に筋強直性ジストロフィーの診断に至った1例
會田 悦久
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2016 年 48 巻 SUPPL.1 号 p. S1_80-S1_83

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抄録

 はじめに : 筋強直性ジストロフィーは成人で最も頻度の高い筋ジストロフィー症であり, ミオトニア現象や握力低下で発症する症例が多いとされる. 今回我々は心室細動を初発とし診断に至った症例を経験したため報告する.

 症例 : 23歳男性. 映画館内で映画鑑賞中に突然卒倒, 駆けつけた警備員により119番通報, CPR施行, AEDにより除細動された. 覚知から7分後に救急隊到着, JCS200自発呼吸があり, 当院からドクターヘリが出動, 覚知から26分後に患者に接触となった. 当院到着後に意識状態は変わらず, 12誘導心電図では左軸偏位, ST異常なし, 心臓エコーでは心機能良好であり, 有意弁膜症なしであった. 特発性心室細動として入院とし, 低体温療法を施行した. 第6病日に意思疎通良好であり抜管したが自力での喀痰排出困難であり再挿管としその後気管切開施行に至った. 父親が筋強直性ジストロフィーの家族歴や現症から筋強直性ジストロフィーによる不整脈および症状が疑われたため当院神経内科に紹介とし診断に至った.

 結論 : 筋強直性ジストロフィーの初発症状が致死性不整脈である症例は多くはないとされるが存在することを認識する必要ある. 一方で筋強直性ジストロフィーでは麻酔薬に対する感受性亢進や悪性高熱発症のリスクが高いとされる. 低体温療法施行による長時間の筋弛緩薬や麻酔薬の使用が結果的に本疾患の嚥下障害や呼吸筋障害を増悪させた可能性があり, 注意を要すると考える.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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