心臓
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第28回 臨床不整脈研究会
反復する失神を主訴とし,下側壁誘導にJ波を認め,冠攣縮誘発に伴い心室細動が惹起され,除細動直後に右側胸部誘導でcoved型ST上昇が顕在化した1例
近藤 秀和篠原 徹二今村 貴亮髙野 正幸石井 悠海小深田 麻美原口 美帆大坪 豊和長野 徳子秋岡 秀文手嶋 泰之油布 邦夫中川 幹子髙橋 尚彦
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2016 年 48 巻 SUPPL.2 号 p. S2_209

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抄録

症例は65歳男性.突然死の家族歴はない.201X年1月に失神をきたした.同年7月X日早朝に3度の意識消失失神(15分程度)をきたし近医に救急搬送された.到着時,モニター心電図でST上昇および完全房室ブロックを認めた.冠動脈造影(エルゴノビン負荷試験)で右冠動脈に攣縮が誘発されたため,失神は冠攣縮によるものと判断された.Ca拮抗薬と硝酸薬を処方されたが,退院して再度失神したため当科を紹介され入院した.12誘導心電図で下側壁誘導にslur typeのJ波を認めた.EPSでVFは誘発されなかった.ピルジカイニド負荷でBrugada型変化は生じなかった.冠拡張剤内服下で冠攣縮誘発試験を行ったところ,右冠動脈に冠攣縮が誘発され下壁誘導にST上昇が惹起され,V1誘導でJ点が上昇し心室細動を生じた.除細動直後,右側胸部誘導(V1,V2)でcoved型ST上昇が顕在化した.心室細動発症にJ波(早期再分極所見)が関与したと考えられる興味深い症例であり報告する.ICDの適応についても言及したい.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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