2016 年 48 巻 SUPPL.2 号 p. S2_209
症例は65歳男性.突然死の家族歴はない.201X年1月に失神をきたした.同年7月X日早朝に3度の意識消失失神(15分程度)をきたし近医に救急搬送された.到着時,モニター心電図でST上昇および完全房室ブロックを認めた.冠動脈造影(エルゴノビン負荷試験)で右冠動脈に攣縮が誘発されたため,失神は冠攣縮によるものと判断された.Ca拮抗薬と硝酸薬を処方されたが,退院して再度失神したため当科を紹介され入院した.12誘導心電図で下側壁誘導にslur typeのJ波を認めた.EPSでVFは誘発されなかった.ピルジカイニド負荷でBrugada型変化は生じなかった.冠拡張剤内服下で冠攣縮誘発試験を行ったところ,右冠動脈に冠攣縮が誘発され下壁誘導にST上昇が惹起され,V1誘導でJ点が上昇し心室細動を生じた.除細動直後,右側胸部誘導(V1,V2)でcoved型ST上昇が顕在化した.心室細動発症にJ波(早期再分極所見)が関与したと考えられる興味深い症例であり報告する.ICDの適応についても言及したい.