心臓
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[症例]
ST上昇型急性心筋梗塞に対する冠動脈インターベンション後に急激な意識障害をきたし,頭部CTでクモ膜下出血が判明したため緊急開頭血腫除去術を要した1例
宮﨑 亮一宮本 貴庸川初 寛道関川 雅裕三輪 尚之山下 周原 信博山口 徹雄稲葉 理山内 康照尾林 徹磯部 光章
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2017 年 49 巻 1 号 p. 67-72

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抄録

 症例は46歳男性.職場で失神して倒れているところを発見され救急搬送された.病院搬送時は意識清明で胸痛を訴え,心電図でⅡ,Ⅲ,aVF誘導のST上昇を認め,急性下壁心筋梗塞の診断で緊急心臓カテーテル検査を施行した.#3 100%,#6 90%の所見であり,責任病変の#3に対して経皮的冠動脈インターベンションを施行,血栓吸引の後に薬物溶出性ステントを留置した.集中治療室へ入室後に,急激な意識障害が出現したため,頭部CTを施行したところ,左脳溝にクモ膜下出血を認めた.ヘパリンリバース,新鮮凍結血漿投与を行ったが,経時的に運動失語と左片麻痺が出現し,神経所見の悪化を認め血腫の増大も認めたことから,緊急開頭血腫除去術を施行した.脳動脈造影を行ったが動脈瘤を認めず,経過から外傷性クモ膜下出血が抗血栓薬により急激に増大したものと考えられた.本症例では目撃者がなく初診時の診察で頭部に外傷所見がなかったため頭蓋内出血の可能性を考えなかった.外傷の有無が不明な失神や転倒の場合は,頭部の出血合併症の併発を念頭におき,初診時から頭部CTによる検索を考慮する必要があると考えた.

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