症例は66歳男性.○年○月,ハーフマラソン20 km付近で心肺停止となった.一度の自動体外式除細動器(AED)作動で心拍再開し,当院来院時は意識清明で循環動態は安定していた.心電図にてV5-6のST低下を認め,超音波検査では前壁中隔の中部から心尖部に高度壁運動低下を認めた.急性冠症候群の診断で緊急冠動脈造影検査を施行したところ,左前下行枝#7に90%の狭窄を認めたため経皮的冠動脈形成術を施行した.peak CK/CK-MB 3946/108 IU/Lの心筋梗塞で,急性期Forrester Ⅱ型で利尿薬治療を要したが,退院時には壁運動はほぼ改善し利尿薬も不要となった.本症例は前駆症状のない症例であり,事前に詳細なメディカルチェックを行うことは困難であった.しかしながら,迅速な心肺蘇生により神経学的にも良好な転帰を得られており,ランナーの救命率向上のためには,一次救命処置の普及・啓発やAEDの配備が重要であると考えられた.