心臓
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第29回 心臓性急死研究会
初発症状が心肺停止であった顕性WPW症候群の1例
中島 孝久保田 知希高杉 信寛山田 雄大金森 寛充牛越 博昭青山 琢磨川崎 雅規西垣 和彦湊口 信也
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2017 年 49 巻 SUPPL.1 号 p. S1_76-S1_83

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抄録

48歳女性.失神歴および心突然死の家族歴なし.生来A型WPW症候群を指摘されていたが,無症状のため,経過観察されていた.X年Y月Z日朝反応がないため,家人に救急要請された.救急隊接触時心室細動(VF)を認めたため,自動体外除細動(AED)で電気的除細動が施行され自己心拍が再開した.病院到着時,意識レベルJCS 300であったため,挿管された.緊急で施行した冠動脈造影で冠動脈に有意狭窄はなく,エルゴノビン負荷試験でも冠攣縮は誘発されなかった.集中治療室に入室し,低体温療法およびカテコラミン投与を行った.全身状態が徐々に改善したため,復温しカテコラミンも漸減中止し,第4病日に抜管された.その後リハビリを行い,神経学的後遺症は認めなかった.第16病日電気生理学的検査が施行された.左側壁順行性副伝導路不応期220msで,心房期外刺激でorthodromic房室回帰性頻拍が誘発された.経皮的カテーテル心筋焼灼術で副伝導路離断に成功した.心室期外刺激法で心室細動は誘発されなかった.Pilsicainide負荷試験でBrugada心電図波形を認めず,心臓MRIで造影遅延は認めなかった.遺伝子検査は患者が希望しなかったため,施行されなかった.早期再分極症候群の可能性も否定はできなかったが,AED記録で蘇生後の頻脈性心房細動(AF)が確認され,AFによる偽性心室頻拍からVFを生じたと診断され,植込み型除細動器は植込まず,経過観察される方針となった.初発症状が心室細動による心肺停止であった顕性WPW症候群の蘇生例を報告する.

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