2019 年 51 巻 4 号 p. 409-416
症例は52歳,男性.28歳時にムコ多糖症・型Scheie症候群と診断され,44歳より酵素補充療法が開始された.当初より大動脈弁狭窄を指摘されていたが,酵素補充療法にもかかわらず狭窄が進行し,手術適応の評価のため入院となった.心エコー検査上,有効弁口面積係数0.39 cm2/m2,大動脈弁平均圧較差49.6 mmHgと高度狭窄であった.軽度の僧帽弁狭窄と,冠動脈造影で左前下行枝に有意ではないびまん性狭窄病変を認めたが,大動脈弁単独置換術を実施した.術直後の経過は良好であったが,術後6日目に冠攣縮が原因と考えられる心室細動を発症,心肺蘇生後PCPSによる補助循環を必要とした.冠血管拡張薬にて血行動態は安定し,術後9日目に補助循環を離脱し術後51日目に退院した.切除した大動脈弁の病理組織像は非特異的硬化病変であった.Scheie症候群では心臓弁膜症は酵素補充療法下でも進行し,心臓周術期の重篤な合併症に注意が必要である.