心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[症例]
妊娠初期に肺血栓塞栓症を契機にアンチトロンビンⅢ欠損症と診断された全前置胎盤,癒着胎盤合併妊娠の1例
上本 明日香岡山 英樹川村 豪重松 達哉川田 好高日浅 豪山田 忠克風谷 幸男
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 51 巻 4 号 p. 417-422

詳細
抄録

 症例は33歳女性,2経妊1経産,妊娠12週5日.左下肢全体の腫脹を主訴に前医を受診,深部静脈血栓症を疑われ当科を紹介受診した.血液検査でD・Dダイマー22.6 μg/mLと上昇しAT(アンチトロンビン)Ⅲ活性42%,抗原量9.5 mg/dLと低下していた.血管エコー検査で左膝窩静脈から下大静脈まで連続する血管拡張を伴う低エコー像を確認,造影CTで同部位ならびに両側下肺動脈内に血栓を認め,ATⅢ欠損症による深部静脈血栓症,肺塞栓症と診断した.直後よりヘパリンNa持続静注およびATⅢ製剤の補充を開始し,下大静脈フィルターを留置した.血栓の退縮を認めたため第27病日に下大静脈フィルターを抜去,その後ヘパリンCaおよびATⅢの補充を継続し外来管理とした.妊娠23週に全前置胎盤,癒着胎盤と診断され出産時の大量出血のリスクが懸念されたため,帝王切開術・子宮全摘術を施行する予定とした.妊娠35週2日にハイブリッド手術室にて,尿管ステントおよび両側内腸骨動脈にバルーン留置し帝王切開術にて児を娩出,直後に内腸骨動脈バルーンを拡張し出血コントロール下に子宮全摘術を施行した.危機的出血や血栓症の再発なく経過し,術後5日目に独歩退院した.多職種の連携による集学的治療が奏功したATⅢ欠損症による肺塞栓症・深部静脈血栓症,全前置胎盤,癒着胎盤合併妊娠の1例を経験したので報告する.

著者関連情報
© 2019 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top