心臓
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[症例]
Coved type Brugada型心電図を呈した重症心筋虚血の1例
杉田 聖子甲斐 貴彦鈴木 浩二瀧島 勲猪野 友里沢登 貴雄
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2019 年 51 巻 4 号 p. 425-429

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抄録

 症例は57歳男性.健診心電図で右脚ブロック,右側胸部誘導でsaddleback型ST上昇を指摘され当院を受診した.失神等の既往はなく,Holter心電図でも所見を認めないために経過観察となった.2年後に兄が62歳で突然死した.心電図はcoved型ST上昇に変化していた.Brugada症候群が疑われ,電気生理学的検査を予定したが,その際に施行した冠動脈造影検査で左冠動脈主幹部に90%,前下行枝中間部に75%,第一対角枝に90%の狭窄を認めた.冠動脈バイパス手術が施行され,術後は心電図でのST上昇は消失した.術後7年間,無症状で経過しており,Holter心電図,運動負荷試験でも有意な所見を認めていない.Brugada型心電図に心筋虚血が合併することが報告されている.右冠動脈円錐枝の梗塞や冠攣縮に伴う一過性変化はいくつか報告されているが,左冠動脈近位部狭窄に伴う一過性変化は稀である.本症例では左冠動脈の虚血の解除によりBrugada型心電図変化が消失したこと,また術後7年間,無症状で経過しており,Holter心電図,運動負荷試験でも有意な所見を認めていないことより,左冠動脈近位部の狭窄が原因でBrugada型心電図を呈したと考えられた.Brugada型心電図を呈した重症心筋虚血の1例を経験した.Brugada型心電図を認めた際には器質的冠動脈狭窄の評価が必要と考えられたため報告する.

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