心臓
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[症例]
下大静脈フィルターの下行大動脈穿孔に対し,経カテーテル的にフィルターを回収し得た急性肺動脈血栓塞栓症の1例
加藤 真吾齋藤 文美恵朝比奈 直揮飯沼 直紀上村 大輔仲地 達哉岩澤 多恵合田 真海栁 浩正福井 和樹
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2019 年 51 巻 4 号 p. 440-447

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抄録

 症例は高血圧,発作性心房細動などで他院通院中の58歳男性.2017年12月から左下腿浮腫と疼痛が出現し,当院を受診した.来院時Dダイマー 4.21 μg/mLと高値であり,下肢エコーを施行したところ,左大腿静脈から膝窩静脈にかけての広範な領域に浮遊性血栓を認めた.造影CTでは両側肺動脈に血栓を認めたため,急性肺動脈血栓塞栓症および深部静脈血栓症と診断し,入院加療の方針とした.同日,右内頸静脈よりALN下大静脈フィルターを挿入し,抗凝固療法を開始した.入院第6日に造影CTを施行したところ,肺動脈の血栓は縮小傾向であったが,ALN下大静脈フィルター脚の先端が下大静脈壁を穿孔し,大動脈まで穿孔している所見が得られた.そのまま永久留置の方針も考慮されたが,入院第13日に,手術室にて全身麻酔でALN下大静脈フィルターを経カテーテル的に回収した.この際,万が一,フィルター抜去時に大動脈から出血した際にすぐに大動脈ステントグラフトの内挿もしくは開腹手術で対応できるように,大動脈ステントグラフトを準備し手技を行った.下大静脈フィルター回収後,疼痛や出血などの出現は認めなかった.

 大動脈穿孔したALN下大静脈フィルターを,経カテーテル的に回収し得た症例は稀と思われ若干の考察とともに報告する.

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© 2019 公益財団法人 日本心臓財団
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