2019 年 51 巻 4 号 p. 448-452
症例は65歳の男性であり,労作時の胸痛を主訴として他院を受診して不安定狭心症(前下行枝近位部99%狭窄),中等度大動脈弁狭窄症,低左心機能(EF=22%),Leriche症候群と診断され治療目的に当院へ転院となった.冠動脈バイパスと大動脈弁置換の方針とした.低左心機能のため周術期に大動脈内バルーンパンピング(IABP)を要する可能性があったが,下肢からの挿入は不可能であり,また術中に他の経路から緊急的に挿入することは困難であるために,術前に上肢からIABPを予定挿入することとした.麻酔導入前に放射線透視下で左上腕動脈よりIABPを挿入しバルーンを遠位弓部から下行大動脈内に留置し,冠動脈バイパス術と大動脈弁置換術を施行した.第1病日にIABP,人工呼吸を離脱した.以後の経過は順調であり,独歩退院となった.