心臓
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[症例]
リードレスペースメーカ植込み後にたこつぼ様壁運動異常を認めた2例
中須賀 公亮溝口 達也山本 惇貴加藤 真理奈横井 雅史森 賢人北田 修一後藤 利彦瀬尾 由広大手 信之
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2021 年 53 巻 10 号 p. 1100-1107

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抄録

 リードレスペースメーカ(LPM)は,ペーシングの適応のある経静脈リード留置が困難な症例などを中心に近年普及しつつある.我々はLPM植込み後にたこつぼ様壁運動異常を呈した2症例を経験した.

 症例1は89歳女性.陳旧性心筋梗塞,徐脈性心房細動,大動脈弁狭窄症を背景に心不全で入院.冠動脈に新規狭窄なし.心不全の改善を期待しLPMを挿入したが,2週間後に薬剤性低ナトリウム血症に伴い心エコー図にて左室心尖部の無収縮,心電図上広範なST-T変化とQT延長を認めた.1週間の経過で左室壁運動は改善したがわずかに退院時左室心尖部の限局性壁運動異常が残存した.

 症例2は認知症のある93歳男性.一過性完全房室ブロックのため入院となった.冠動脈有意狭窄なし.ペーシング依存にはならないと予想され,病棟では不穏状態のため経静脈ペースメーカ植込み後の創部掻爬などのリスクを懸念しLPMを挿入した.しかし翌日torsades de pointesを発症.心エコー図では左室心尖部の無収縮,心電図上著明なST-T変化とQT延長を認めた.数日の経過で心尖部壁運動や心電図変化は改善したが,左室心尖部よりの中隔壁運動異常が残存した.

 LPMに関連する合併症は植込み時だけでなく,その後の経過中にも出現しうることを認識し慎重に観察する必要がある.

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