心臓
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[症例]
透析中の胸痛を伴う血圧低下に左室内狭窄の関与が示唆された1例
神尾 麻里子原田 顕治渡部 智紀脇 広昂菅野 美和柿沼 有子宮本 史雄岩谷 周一細川 俊彦苅尾 七臣
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2021 年 53 巻 2 号 p. 177-182

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抄録

 80歳代,女性.慢性腎臓病のため某年3月に近医で左肘部自己血管内シャント造設術が施行され,同年11月に血液透析が導入された.当初透析は安定して施行されていた.翌年2月,透析終盤に胸痛を伴う血圧低下を認め近医に救急搬送された.緊急冠動脈造影検査では冠動脈病変は認められなかった.その後も透析終盤に同様な症状を頻回に繰り返した.精査目的に透析前と透析中の症状出現時において心エコー検査を施行した.透析前(血圧150/74 mmHg)の心エコー検査では,左室壁は肥厚し左室内腔は狭小化していた.左室駆出率は71%であった.透析終盤の胸痛発作出現時(血圧76/50 mmHg)の心電図ではV1-6でのSTの軽度上昇およびaVL,V5-6でのT波終末部の陰転化を認め,心エコー検査で左室内に収縮後期にピークを有する最大流速5.4 m/s(圧較差118 mmHg)の加速血流を認めた.除水により誘発された左室内狭窄(LVO)が胸痛を伴う血圧低下に関与していると考えられた.その後,ドライウエイトを上方修正し(44 kg→46 kg)緩徐な除水設定に変更した.以後,血圧低下や胸部症状の出現もなく安定した透析が行われている.透析中に施行した心エコー検査により,胸痛を伴う血圧低下の原因としてLVOの関与を同定し得た.冠動脈病変が否定された透析中の狭心症症状の原因としてLVOの存在を念頭に置くべきである.

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