2021 年 53 巻 3 号 p. 280-284
症例は60歳,男性.幼少期から心室中隔欠損症を指摘されていた.歯科治療後1カ月間持続する発熱を主訴に受診し,大動脈弁の疣贅を指摘され感染性心内膜炎の診断で入院となった.血液培養から連鎖球菌が検出され,6週間の抗菌薬治療で治癒に至った.退院後徐々に倦怠感が出現し,心拡大の増強やBNP上昇をきたし,経食道心エコーでは既知の心室中隔欠損に加えて大動脈右室瘻を認めた.カテーテル検査でQp/Qs=2.5であり,手術方針となった.術中所見では,大動脈弁は二尖で無冠尖に穿孔があり,バルサルバ洞は瘤化していないが右冠尖に右室と交通する瘻孔を認めた.欠損孔・瘻孔の閉鎖と大動脈弁置換術を施行後,経過良好である.本例は細菌感染により脆弱になったバルサルバ洞が右室へ穿破し大動脈右室瘻を形成したものと考えられた.感染性心内膜炎による大動脈右室瘻に対して外科的修復術を行った報告は少なく,文献的考察と併せて報告する.