心臓
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[症例]
ダビガトランで抗凝固療法中に肺胞出血をきたし,イダルシズマブ使用にて軽快した高齢心房細動の1例
谷保 康一雨森 健太郎松本 雄二芦澤 直人
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2021 年 53 巻 3 号 p. 286-290

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抄録

 症例は91歳男性.慢性心房細動に対して,チクロピジンおよびバイアスピリンを内服中であったが,7年前に両薬剤を中止し,ダビガトランに切り替えられた.入院4日前頃から呼吸困難,血痰が出現し,前日から発熱も認めたため入院となった.胸部単純X線写真,およびCTで両側肺浸潤影・すりガラス影を認め,肺炎または肺胞出血が疑われた.同日より抗菌薬(ピペラシリン/タゾバクタム)を開始し,ダビガトランは休薬したが,発熱,血痰は持続し,第2病日には右上葉のすりガラス影は増悪し,3 L/minの酸素投与を要する状態となったため,イダルシズマブ5 gを使用した.その後は解熱し,酸素投与も第7病日には中止し,第13病日に退院となり,本人および家族の意向により,以後は抗凝固薬を使用せずに経過観察する方針となった.ダビガトランによる肺胞出血の症例の報告は少なく,その治療に中和薬を用いた報告は非常に稀である.本症例は,腎機能の低下した超高齢者では,凝固能のモニタリング指標として用いられているaPTTがそれほど著明に延長していなくても肺胞出血を発症しうること,またダビガトラン中止後もaPTT低下に時間を要し,症状が遷延することを示している.

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