2021 年 53 巻 8 号 p. 841-846
上行大動脈に生じた感染性大動脈瘤が破裂し心タンポナーデとなった症例に対して,緊急で上行大動脈人工血管置換術と大網充填術を施行した症例を経験したので報告する.症例は77歳,男性.全身倦怠感で前医を受診し炎症性マーカー上昇のため緊急入院となった.感染源不明のまま抗菌薬投与で加療されたが改善せず,入院6日目に呼吸困難,胸部不快を認め精査し,心タンポナーデと判断され当院に搬送された.造影CTで上行大動脈に造影増強効果のある嚢状瘤を認め,感染性上行大動脈瘤破裂による心タンポナーデの診断で緊急上行大動脈人工血管置換術と大網充填術を行った.術前の血液培養と心嚢液培養からStaphylococcus aureusが検出され,大動脈壁の病理所見では菌塊を認めた.術後,散在性脳梗塞を認め意識レベルの低下があったが,上記術式と抗菌薬投与継続で救命し紹介元の病院へ転院した.感染性大動脈瘤破裂症例に対する緊急人工血管置換術と大網充填術の併用は,術後敗血症や人工血管感染を含む重症感染症管理の観点から有用であると考えられた.