症例78歳男性.47歳時に僧帽弁狭窄症に対して,僧帽弁置換術が施行された(St Jude Medical弁:SJM 31 mm).以後31年間,胸部症状の訴えはなく,経時的な心臓超音波検査では異常所見を認めず,さらに血液検査でもBNP 50-70 pg/mL台,Hb 10-11 g/dL台,LDH 200-220 U/L台で推移していた.今回,うっ血性心不全にて受診され,BNP 406 pg/mLと上昇を認めた.受診時の心電図ではI誘導と胸部誘導(V3-6)に新たな陰性T波を認め,心臓カテーテル検査の結果,たこつぼ心筋症の診断を得た.また,たこつぼ心筋症以外に,人工弁縫合部周囲に新たな軽度の僧帽弁閉鎖不全(弁周囲逆流)を認め,入院後もLDHの持続上昇(500-700 U/L台)とともに,溶血性貧血の進行(Hb 7.0 g/dL)を認めた.推測の域を出ないが,たこつぼ心筋症発症後に生じた左室心基部側の過収縮が新たな弁周囲逆流発生の一因になった可能性も否定しきれない.僧帽弁置換術後の症例に,たこつぼ心筋症が併発する頻度は高くはないと思われるが,かかる病態は,たこつぼ心筋症に併発する病態の一つとして認識しておく必要があると考えられた.