心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[臨床研究]
感染性心内膜炎症例の原因菌別臨床背景と心エコー図診断
岡部 裕美山野 倫代藤仲 直美溝部 佑希大塚 明子加藤 ゆず子山野 哲弘沼田 智稲葉 亨貫井 陽子夜久 均的場 聖明
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 54 巻 12 号 p. 1355-1363

詳細
抄録

 目的:当院での感染性心内膜炎(IE)患者の原因菌による臨床背景の違い,IEによる異常所見の心エコー図診断精度を明らかにすること.

 方法:2014年1月から2020年12月の7年間にDuke診断基準に基づきIEと診断した連続58症例を対象とし,診療録からデータを抽出し後ろ向きに分析検討した.

 結果:56症例で原因菌が同定され,レンサ球菌群が41%,黄色ブドウ球菌群が26%を占めた.疣腫サイズは菌種による有意差を認めなかったが,レンサ球菌群は発症から抗菌薬投与(中央値[最小値-最大値]:18日[1-137]),心エコー図評価日までの日数(82日[3-195])が有意に長く(いずれもp<0.05),初回心エコー図評価時には弁穿孔などの機械的合併症は黄色ブドウ球菌群と同程度に認められた.経胸壁心エコー図(TTE)では手術所見との診断一致率は66%であったが,経食道心エコー図(TEE)では85%に改善した.TEEでは疣腫と弁周囲膿瘍は100%検出可能であった.TTE,TEEともに検出困難であったのは大動脈弁位の穿孔であった.

 結論:原因菌によって臨床経過に違いを認めたが,IEの合併症に有意な違いを認めなかった.TEEの診断精度はTTEに比較して良好であり,早期にTEEを行うことが必要であると考えられた.

著者関連情報
© 2022 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top