2022 年 54 巻 12 号 p. 1364-1369
症例は45歳の男性.今回入院の4カ月ほど前から発熱,関節痛を自覚するようになり,他院にて脊椎関節炎の診断で加療されていた.入院前日の夜,急激な前胸部痛で当院へ緊急搬送された.経胸壁心臓超音波検査で僧帽弁に疣腫を認め,精査の結果,急性冠症候群が疑われ緊急心臓カテーテルを施行し,#8 100%の病変を認めた.血栓吸引により血流再開に成功,吸引物は肉眼上血栓ではなく疣腫が疑われた.僧帽弁に疣腫を伴い,その塞栓により急性冠症候群を合併しており,カテーテル治療翌日に緊急開心術を施行した.僧帽弁は前後尖とも疣腫が存在し,切除し機械弁による僧帽弁置換術を施行した.起因菌はG群連鎖球菌で術後40日間の抗菌薬加療を行い血液培養の陰性化を確認して独歩退院となった.疣腫の塞栓による急性心筋梗塞は稀であり,文献的考察を加えて報告する.