2022 年 54 巻 12 号 p. 1388-1397
症例は71歳,男性.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)疑いに対して精査を勧められていたが,本人の希望により未施行であった.消化管出血を契機に肺高血圧クライシスに陥った.肺動脈造影等によりCTEPHと診断し,経皮的心肺補助装置(PCPS)を導入し,合計4回のバルーン肺動脈形成術(BPA)を実施し,約1カ月後にPCPSから離脱した.一般的にCTEPHは労作時息切れで発症し慢性に経過するが,本症例のように重症例では肺高血圧クライシスに至る症例も存在する.PCPSなどの集学的治療とBPAを繰り返すことで救命することができた1例を経験した.