2022 年 54 巻 2 号 p. 173-179
背景:拡張期圧較差(DPG)は左心不全による肺高血圧(PH)において肺微小血管障害を反映し,かつ右室機能と関連すると報告される.しかし,PHを伴わない左心不全におけるDPGと右室機能障害の関連性はいまだ不明である.
目的:DPGと心臓超音波検査における右室機能の関連性を検討した.
方法・結果:2015年1月~2017年10月の期間に左心性心疾患による急性心不全で入院し,血行動態安定後に右心カテーテル検査(RHC)を施行した87例を対象とし後ろ向きに調査した.RHC直近の心臓超音波検査での三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)と三尖弁輪収縮期最大移動速度(S’)を算出した.TAPSEおよびS’とRHC所見との関連に対し線形回帰分析を用いて検討した.TAPSEおよびS’はいずれもDPGと有意な関連を認め,独立した予測因子であった(TAPSE:β=−0.241,p=0.020,S’:β=−0.015,p=0.047).
結語:PHを伴わない左心不全におけるDPGは右室機能障害と関連する.