心臓
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[症例]
ステント留置が奏効した心筋ブリッジの2例
福田 優人西堀 祥晴芳川 史嗣髙橋 怜嗣飯尾 千春子高田 昌紀藤田 幸一丸山 貴生
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2023 年 55 巻 8 号 p. 843-848

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抄録

 心筋ブリッジは本来心外膜組織を走行する冠動脈の一部が心筋内に埋没している病態で,一般には予後良好とされているが,稀に心筋梗塞や致死性不整脈の要因となることがある.今回,心筋梗塞や致死性不整脈への関与が疑われた心筋ブリッジに対して冠動脈ステントを留置し,それを冠動脈CTで評価し,良好な経過を得た2症例を経験したので報告する.
 症例1は50歳代,男性.急性下壁心筋梗塞の診断で,右冠動脈の責任病変に冠動脈インターベンション(PCI)を行った.術中,昇圧目的にカテコラミンを開始したところ心室細動を認めた.PCIが成功した後,冠動脈造影所見を再評価すると,カテコラミン投与開始後より左前下行枝中間部の心筋ブリッジが過収縮となっていたことが判明した.心筋ブリッジの過収縮が心筋虚血を増悪させ,ひいては心室細動出現の誘因となった可能性が残されるため,患者の同意のもと,心筋ブリッジにステントを留置した.その後,胸部症状および心室細動は認めていない.
 症例2は80歳代,女性.急性前壁梗塞の診断で緊急冠動脈造影を施行した.結果,冠動脈に器質的狭窄および閉塞病変はなく,左前下行枝中間部に心筋ブリッジを認めるのみであった.来院時の心電図,心エコー所見より,同部が責任病変であると判断し,心筋ブリッジにステントを留置した.後日実施した心筋シンチにおいて,この判断を支持する所見が得られた.

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