抄録
腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症(MR)は心エコー図により診断されつつある.最近かかる剖検確認例を経験したので報告する.症例1:81歳,女.77歳で浮腫が増加し入院.心尖部に4/6度の全収縮期雑音および胸骨左縁に2/6度の拡張期雑音聴取し,MRおよび大動脈弁閉鎖不全症(AR)と診断心エコー図で拡張早期に僧帽弁後尖の急速前方運動があり腱索断裂を疑った.その後脳硬塞を併発し死亡.剖検で僧帽弁後尖に付く3本の腱索が断裂し後尖はパラシュート状に左房へ突出していた.症例2:89歳女.80歳から心尖部に度4/6の全収縮期雑音,胸骨左縁に3/6度の拡張期雑音を聴取.85歳,心不全で入院,MR+ARで心エコー図で収縮期に僧帽弁の多重エコーがあり腱索断裂を疑った.4年後心不全悪化し急死.剖検にて僧帽弁前尖および後尖に付く腱索が1本ずつ断裂していた.以上2例は病理学的にリウマチ性病変や心内膜炎は見られず特発性の腱索断裂によるMRとまちがい考えられる.