抄録
過去5年間に5回の再燃を繰り返した27歳,男子の急性心膜炎の1例を報告した.症例は発熱,呼吸困難,胸部痛を訴えて来院した.
聴診上の心膜摩擦音,心陰影の左右への著明な拡大,心電図上のST,Tの変化を呈し,典型的な急性心膜炎であったが,同時に左胸膜炎,肝炎の合併をみた.ステロイド剤の使用により,その症状および検査成績は改善されたが以後,過労,不摂生を契機として再燃を繰り返した.しかし,再燃を繰り返すにつれて,その症状および検査成績は逓減化したが,いずれの再燃期にも白血球数,血沈などの炎症性反応の変化をみた.ウイルス中和抗体価は初回罹患時Coxsackie B2が80倍へ上昇したが,再燃期にはその上昇は認められなかった.ステロイド剤の使用は症状改善には効果がみられたが,再燃防止には効果はなく,その使用にあたっては慎重であらねばならぬことが痛感された.