抄録
Marfan症候群には多種類の心血管病変が報告されている.今回報告する姉妹はannulo-aortic ectasia,大動脈弁閉鎖不全症,胸部大動脈瘤,腹部大動脈瘤と類似した心血管病変を40代,30代という比較的高齢に発現し,いずれも4年以上にわたり経過を観察したものである.両者の病変の進行には多少の違いはあるものの胸部単純写真,心電図,心音図などよく似た経過を示した.家系調査の結果,姉の2女に骨格系の異常と両側水晶体偏位が存在したのでMarfan症候群と診断し今後母親と同様の心血管系異常を来たすことが推測された.妹は昭和52年7月尿毒症で死亡した.姉の心エコー図からは大動脈の全過程にわたり興味ある奇異運動の所見が得られ,心血管造影で大動脈病変を確かめることができた.この疾患の血縁にはいわゆる不全型(forme fruste)の多いことが報告されているのでさらに家系調査が必要である.