心臓
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研究 局在性血管傷害の病態生理
流体力学的モデルによる考察
福嶋 孝義
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1978 年 10 巻 3 号 p. 270-281

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抄録

アテロームの生成,Poststenotic dilatatio臓および心血管雑音の発生に対する血行力学因子の役割を,狭窄血管モデルを用いた定常流と拍動流の水流可視化実流により調べ,次の結果を得た.
1.従来,病変の成立機序に対する血流の力学的作用は,定常流に対する流体力学的知見に基づいて考察されてきたが,主要動脈系では血流の拍動性を無視した考察はまったく不適当であることを示した.
2.定常流の場合にみとめられる淀んだ剥離領域は,拍動流の場合もはや存在せず,その領域は拍動ごとに強い渦輪の形成・吐き出し・崩壊を繰り返す流れの撹乱部となる.
3.心血管雑音の成因は,このような流れの撹乱による大きい壁圧変動の結果,心・血管壁に振動が誘起されることによると考えられる.
4.同じく,高調波成分をもつ流れの撹乱は動脈壁の構造破壊ををもたらすと予測される.この際,動脈壁の構築特性に基づく共振構造が密接に関係していると思われる.
5.渦の形成・吐き出し・崩壊という流れ撹乱の発生する場所では不安定なストレスパターンを内皮に及ぼし,内皮剥離,内膜の透過性高進が起こっていると考えられ,粥状硬化の好発部位となりうるものと推定される.

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