抄録
陳旧性前壁中隔,前壁および前側壁心筋梗塞患者29例について201Tl心筋scintigramより推定した梗塞量とFrank誘導QRS瞬時ベクトルとの相関を検討し,次の結果を得た.
1)左室前壁部201Tl平均摂取率とQRS瞬時ベクトルのZ成分との相関は24msec(tA)で最大であった(r=-0.70,p<0.001).すなわち前壁梗塞が大きい程24msec QRS瞬時ベクトルはより後方へ向かった.この時間tAは梗塞群のZ成分が健常対照群(N=55)のZ成分と最も有意な差を示す瞬時,20msecとほぼ一致した.
2)左室側壁部201Tl平均摂取率とQRS瞬時ベクトルX成分との相関は34msec(tL)で最大であった(r=0.57,P<0.01).この時間tLは梗塞群のX成分が健常対照群のX成分と最も有意の差を示す瞬時34msecと一致した.時間tLが時間tAより若干長いのは,左室側壁と左室前壁の興奮到達時間の差異を反映すると推察された.