心臓
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症例 心筋梗塞急性期に冠血栓を認め,慢性期に正常冠動脈像を呈した連合弁膜症の1例
延吉 正清日浅 芳一
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1981 年 13 巻 1 号 p. 42-49

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抄録
心筋梗塞発症2時間後に施行した冠動脈造影で血栓を証明し,1カ月後の再検で正常冠動脈像を呈した連合弁膜症の1例を報告した.症例は42歳の女性.20年来心臓弁膜症と診断され治療を受けてきた.突然の左前胸部激痛で発病した.発症直後の心電図でI,aVL誘導のST部が上昇しており高位側壁梗塞症と診断した.発症2時間後に施行した冠動脈造影で,左冠動脈回旋枝鈍角枝にカニのツメ状の閉塞所見を認めた.右冠動脈には狭窄所見を認めなかった.血液酵素は,GOT 204u LDH 1440u CPK595mu/dlまで上昇した.治療として,血栓融解剤および抗凝固療法を行った.1カ月後に再検した冠動脈造影で,急性期の閉塞所見は消失し,左右冠動脈ともあらゆる方向からの撮影でも狭窄所見を認めなかった.左室造影でも,明らかな収縮異常を認めなかった.本例は自然発症の血栓を急性期に証明したという点で貴重な症例と考えられた.
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