心臓
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症例 くも膜下出血発症と同時にSTの著明な上昇を認めた1剖検例
望月 茂小池 透浦 恭章関 浩仁木 偉瑳夫
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1983 年 15 巻 1 号 p. 71-77

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抄録
脳血管障害に伴う心電図変化としては,QT延長,大きな上向きまたは下向きのT波,ST上昇または下降,大きなU波,上室性不整脈などが知られている.また,脳血管障害にしばしば肺水腫を合併することも以前より知られている.最近われわれはくも膜下出血で多彩な心電図変化を示し,その経過中に肺水腫を合併し,死後の剖検にて心臓の器質的変化を認めた興味深い1例を経験した.その症例は発症と同時に心電図上STの著明な上昇を認め,その後幅広く大きいT波,QT延長,巨大U波,巨大陰性T波など多彩な心電図変化を示した.再出血にて死亡したが,剖検にて視床下部の変性,壊死,および小さいレベルではあるが心筋細胞の脱落と線維による置換を認めた.視床下部の障害に基づく交感神経刺激がカテコールアミンの過剰分泌を惹起し,心筋の器質的変化をもたらした可能性も考えられる.
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