1983 年 15 巻 8 号 p. 933-938
13歳の男子で,薬剤難治性の心室性頻拍を有し,左心室後下壁起源と考えられたが,超音波検査,胸部X線,冠動脈造影,心筋スキャンでは異常所見はなく,左心室造影で心尖部のhypokinesisのみが認められた.術前の電気生理学的検査では,ブログラム刺激で頻拍の誘発と停止が可能であり,頻拍時の左心室心内膜マッピングにより,左心室後下壁中隔寄りに最早期興奮部位を有するリエントリー型心室性頻拍症と診断した.術中,想定された最早期興奮部位に心筋線維腫が発見され,心表面マッピング上も腫瘍と最早期興奮部位は一致していた.この腫瘍摘除により,頻拍発作の根治に成功した.
心臓腫瘍に起因する心室性頻拍の根治例はこれまでも数例報告されているが,術前および術中の電気生理学的検査により,腫瘍がリエントリー型心室性頻拍の原因であることが証明され,この腫瘍摘除により頻拍が根治されたのは本例が世界で初めてと思われる.