心臓
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症例 孤立性右肺動脈欠損の1幼児例
佐野 のぞみ柳沢 正義原田 三紀夫木村 壮介長谷川 嗣夫二ノ村 信正斉藤 建
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1983 年 15 巻 8 号 p. 939-944

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抄録

症例は咳蹴,喘鳴,呼吸困難を主訴とする1歳1カ月の男児で,新生児期より口唇チアノーゼを認め,肺炎の既往もあった.入院時,理学所見,胸部X線所見より異物も疑われたが,肺血流シンチグラム,心臓カテーテル,心血管造影検査の結果,中等度の肺高血圧を伴う孤立性右肺動脈欠損と診断された.患側肺は肺炎を合併しやすく,健側肺に波及して重症化することより,外科治療の適応と判断された.右肺への血行再建を考慮したが,右肺の病理組織所見より,充分な肺機能の回復は期待できないと判断され,血行再建術を断念し,右肺摘除術が施行された.術後,縦隔偏位による気道閉塞のため,重篤な呼吸障害をきたし,人工気胸術を反復することにより次第に改善をみた.術後1年を経た現在は良好な経過をとっている.摘除肺の病理組織学的検索においても興味ある所見を認めた.本疾患に対し,乳幼児期に肺摘除術を施行した症例の報告はほかにみられない.

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