1984 年 16 巻 1 号 p. 3-8
ヒトの房室結節におよぼす体位変換の影響についての電気生理学的検討は少ない. 今回, 典型的な発作性上室性頻拍症6症例(うち房室結節リエントリー性頻拍5例)につき, 仰臥位と45度Head up Tilt位において洞周期, AH時間および房室結節の不応期を測定し, 比較検討した結果, 房室伝導曲線の偏位および echo zoneの出没を認めたので報告する. 仰臥位より Tilt位へ体位変換すると洞周期, AH時間, 房室結節の機能的および有効不応期は有意に短縮した. 仰臥位で発作性上室性頻拍症の誘発不能な3例は, Tilt位負荷のみで, dual pathwayが顕性化し同時に echo zoneも出現し, reentryを証明し得た. 1例Tilt位に体位変換後, gap現象を伴った dual pathwayが顕性化された. すなわち体位変換は房室結節に機能的変化を持たらし, 発作性上室性頻拍症の発生に大きく関与することが判明した.